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2016 年度 実施状況報告書

20世紀アメリカ文学におけるトラウマとしての奴隷制度の表象

研究課題

研究課題/領域番号 15K16704
研究機関早稲田大学

研究代表者

和氣 一成  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (10614969)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワードF. S. Fitzgerald / Trauma / Modernism / Affective Mapping / Tranceference
研究実績の概要

F. S. Fitzgeraldの作品Tender Is the Nightでは精神科医の夫Dick と彼の元患者であるNicoleの夫婦が登場するが、Dickの施す「治療」はうまくいかず、彼の治療に反する行動をとるNicoleの「回復」に反比例して、Dickは男性的に、社会的に崩壊していく。本論文“Trauma of American Empire
―The Analysis of Tender Is the Night through “Affective Mapping” and “Counter Mourning”―
では、 本作品における精神分析の用語でもある“Tranceference” (「転移」)の果たす役割をmodernismの文脈から先行研究を踏まえて検証した。作品中にはこの転移のプロセスの表象に必ず付随して、過去や歴史への言及がなされるが、その際にアメリカの奴隷制度についてのさまざまな言及がなされている点は重要である。最新の理論分野の一つであるAffective Theory(Jonathan Flatley, Sanja Bahun)に基づいて分析した。この転移の「失敗」(とそれの表象)はmodernism文学の特徴の一つである「断片」性を表すだけではない。「メランコリック」な精神状態に落ち込む主人公Dickの表象と治療としてのTranceferenceの「失敗」の表象は、そのことから逆にNicoleの回復に見られるようなMourningに抗う、創造的な営みになりうる可能性を内包する点を指摘した。また、これらの分析から導き出される結論として、Dickのメランコリーの背後にはアメリカ帝国を支えてきた人種、階級、ジェンダーの各イデオロギーの瓦解が見出せ、それらは「奴隷制度」のメタファーで作品中に歴史的に回帰してくる「亡霊的」表象がなされていることを指摘した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

F. S. Fitzgeraldの作品Tender Is the Nightの分析に際しての理論的な枠組みの確立や先行研究の精査という点ではおおむね順調と言える。ただし、この理論に基づいた作品自体の分析は今後の課題となっており、今回出版した論文の「続き」という形で次回の論文にてまとめ上げる予定でいる。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策として、上記の進捗状況を踏まえて以下の2点に集中する。一つめとして、上の研究論文の完成、具体的にはF. S. Fitzgeraldの作品Tender Is the Nightの作品分析を仕上げること。二つめに、本来の研究予定にあったJean ToomerのCaneの分析および論文作成を行うことである。

次年度使用額が生じた理由

研究費使用計画に記載したPCの購入にあたり、新しいモデルの発売を待っていたため。

次年度使用額の使用計画

本年度中に、出張に持参できるモバイルPCを購入する予定。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] “Trauma of American Empire ―The Analysis of Tender Is the Night through “Affective Mapping” and “Counter Mourning” ―2016

    • 著者名/発表者名
      ISSEI WAKE
    • 雑誌名

      GAKUJUTSU KENKYU (Academic Studies and Scientific Research)

      巻: 65 ページ: 201-221

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり

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公開日: 2018-01-16  

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