昨年度末に刊行した拙著『触れることのモダニティ』をめぐる会議や対談などに今年度の前半は多くの時間を費やすことになった。その成果の一端はヴァージニア・ウルフ協会の学会誌における報告という形で表れている。拙著をめぐるシンポジウムは3月には東京大学の大学院生4人との間とも行われた。そこでは哲学の分野からの応答もあり、拙著の特徴や不備が見いだされた。また、梅田蔦屋書店において行った千葉雅也氏との対談(9月)、拙著についてのレクチャー(10月)、柴田元幸氏との対談(2月)などはアウトリーチの機会ともなった。このような過程で拙著に対する様々なレスポンスを頂いたことは、今後の研究の指針となっている。
共著『メディアと帝国』(2018年中に刊行予定)に所収予定のスティーヴン・クレインと写真的無意識の問題についての論文を仕上げたが、これも写真とテクストの関係をめぐる関心の一環である。また、12月には日本アメリカ文学会関西支部において、写真と文学をめぐるシンポジウムの司会と発表を勤め、そこでは今後の研究の礎石ともなるジェイムズ・エイジ―とウォーカー・エヴァンスの共著についての発表を行った。また同月には日本英文学会関西支部において、トランプ政権化におけるディストピア的なものへの想像力について発表を行った。これもまた今後考えていきたいテーマであり、1930年代のアメリカを再考する動機ともなっている。今後はこれらの成果を基礎として、1930年代と現在のアメリカを交錯させながら思考を深めていきたい。
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