研究課題/領域番号 |
15K16714
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
梅澤 礼 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (50748978)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | デジェネレッサンス / 精神医学 / 文学 / 犯罪学 / フランス / ベルギー / 近代社会 / 犯罪 |
研究実績の概要 |
本研究は、デジェネレッサンス(変質)理論が、19世紀後半のフランスでどのように発展したのか、また文学作品の中にどのように取り込まれたのかを明らかにしようとするものである。 研究の初年度となる平成27年度は、まず19世紀前半の犯罪者の手記と世紀後半の詩人の作品を比較した論文を、日本フランス語フランス文学会学会誌Littera創刊号に投稿した(平成28年3月掲載)。本学会誌は、国外への発信のため厳しい査読を経た論文のみを集めたものであり、そこに掲載されたことは本研究の成果が世界的に認められうることを示している。 5月にはベルギー研究会において、フランス犯罪学とベルギー犯罪学の違いをデジェネレッサンス理論をもとに分析し発表した。8月から9月にかけてはフランスに渡航し、資料収集を行なうとともにフランス人研究者たちとも面会し、うち1名に日本講演の約束を取りつけた(平成28年11月来日、所属機関で講演の予定)。 10月には関西フランス史研究会において、本研究の土台となる、19世紀前半の犯罪者表象について発表した。11月には自然主義研究会において、精神障害者というデジェネレを作家たちがどのように描いたのかについて、ゾラとマロを例に発表を行なった。また日本フランス語フランス文学会において、ヨーロッパにおける科学と文学の相関関係に関するワークショップを企画し、自らも発表した。 1月には日白修好150周年記念行事に参加、平成28年12月に行なわれる記念シンポジウムにおいて、ベルギーにおける精神病理学と文学について発表するべくエントリーした。2月にはデジェネレッサンス理論の起源が19世紀前半の犯罪者表象にあることを示した論文を所属機関の紀要に投稿した。本論文は査読の結果平成28年9月に掲載されることが決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、平成27年度は奇形学理論が19世紀中期の犯罪学に与えた影響を中心に研究を進め、同テーマでの発表や論文執筆を目標としていた。しかしながら本テーマに関してはすでに春の時点でおおむね分析が終わり、論文も掲載されてしまったため、一部平成28年度に予定されていた内容も研究することとなった。その点において、本研究は予想以上に進展していると言うことができる。 とはいえ平成27年度に予定されていたフランス人研究者の日本講演は、研究者の都合により平成28年度に実現されることとなった。同じく、同フランス人研究者の著作の翻訳も、出版社との打ち合わせの結果、抄訳ではなく全訳となったため、平成28年度に完成・出版されることとなった。また、研究の予想以上の進展により平成27年度に着手することとなった平成28年度の研究であるが、思っていたよりも深く掘り下げることのできるテーマであったため、平成28年度も引き続き行なうこととなった。 以上のことから、終了まで2年を予定している本研究は、全体的に見ておおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究の2年目にあたる平成28年度は、まず日本フランス語フランス文学会春季大会において、ゾラとマロの作品における精神障害者の描写の特徴に関する発表を行ない、学会誌への掲載を目指す。次に、フランス人研究者の著作の翻訳を終え、研究者の来日前に出版されるよう校正作業や解説の執筆を進める。 夏にはフランスとベルギーにおいて、研究に必要な資料を収集するとともに、単著の執筆を進める。また来日予定の研究者とも、講演の内容について事前の打ち合わせを行なう。 秋には日本フランス語フランス文学会に参加し、掲載されたデジェネレッサンスの起源に関する論文を研究者たちに配布、意見を求めるとともに、科学と文学に関する共同研究の足がかりとする。 フランス人研究者の来日の折には、ともに日本フランス語フランス文学会関西支部に参加し、文学研究者たちとの交流を深める。また所属機関で講演をしてもらうことによって、文学のみならず、歴史、法律などさまざまな分野の関西の研究者との意見交換の場とする。 冬には日白修好150周年記念シンポジウムにおいてベルギーの精神医学と文学について発表を行なう。このシンポジウムには文理問わずさまざまな分野の研究者のほか一般の人々も参加する。そのため本研究の周知の絶好の機会になると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況にあるように平成27年度に予定していたフランス人研究者の日本講演、およびフランス人研究者の著作翻訳を平成28年度に行なうこととなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
印刷代、図書取り寄せ代などの消耗品費のほか、夏に予定している資料収集のためのフランスおよびベルギーへの旅費・滞在費として使用する。 また、秋に予定しているフランス人研究者の講演会に際しての人件費および謝金としても使用する。
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