本研究は、人間が身体的・道徳的に変質しつつあるとする19世紀のデジェネレッサンス理論の誕生の経緯と、それが社会に浸透してゆくようすを、歴史資料と文学作品から読み解こうとしたものである。 その結果、19世紀前半に誕生した奇形学が、犯罪(精神の奇形と呼ばれた)への関心と結びつくことで、のちのデジェネレッサンス理論を準備していたことがわかった。 文学作品に目を向けてみれば、この時代、作家たちも犯罪者やデジェネレの身体と道徳を細かく描写した。しかしこうすることで作家たちは、個人のデジェネレッサンスではなく、数々の社会問題がいまだ解決されないフランス社会のデジェネレッサンスを告発しようとしたのだった。
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