研究課題/領域番号 |
15K16715
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岩下 綾 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 講師 (40633821)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グロテスク / 仏文学 / ルネサンス |
研究実績の概要 |
本研究課題の第二年度目となる平成28年度には、主に資料調査、一六世紀研究者の招聘、フィールドワークの三点を行った。 資料調査は、昨年度から引き続き「ファンタシア」の概念の整理と、芸術と文学の二分野における修辞学の概念の違いに関するもので、来年度も調査を続ける予定である。 また、2016年10月22日から11月3日にかけてフランスよりパリ・ソルボンヌ大学ミレイユ・ユション名誉教授を招聘し、関西、九州で講義・講演を行うと同時に、各地で本国の一六世紀研究者と研究打ち合わせを行った。講義では、一六世紀の「書き物のジャンル」という言葉と新しい文学ジャンルの登場との関係が明らかにされた。これは、本研究課題で文章技巧理論におけるジャンルの概念を考察するにあたって、非常に有益な指摘であった。他方で講演では、2重のイメージの使用を手法とした文学作品における造形芸術の影響が詳述された。いずれも本研究課題にとって極めて刺激的な内容となった。ミレイユ・ユション名誉教授を交えた研究打ち合わせにおいては、16世紀文学研究に従事する各地の研究者から貴重な示唆を受けることができた。 さらに、16世紀にグロテスク模様が流行するきっかけとなったネロ帝の黄金宮(ドムス・アウレア)が限定的に公開されていたため、2016年末に3日間をかけてローマでフィールドワークを行った。16世紀人が実際に訪れたローマ時代の史跡の壁画や建築構造、16世紀に目にすることができた部位を調査すると同時に、資料収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表者の出産・育児の影響で、資料調査とまとめの作業が遅れているが、フランスからの16世紀研究者の招聘は予定通り行い、文学作品への他の芸術ジャンルの影響について国内外の研究者と意見交換することができた。研究者招聘と意見交換においては、予想以上の有益な展望を得ることができた。また、ネロの黄金宮を実地調査できたことは予想外の収穫であった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、国王フランソワ一世の文化政策の調査として、国王使節としてイタリアに派遣されたジャン・デュベレー一団の足跡を辿り、イタリアからフランスへと流入した文化と文学作品への影響を明らかにしたい。また、ラブレー作品以外の架空譚における「異形のもの」の抽出・分析に手を付けられていないので、早急にとりかかりたい。主にアリオスト『散文訳狂えるオルランド』ジャン・マルタン訳(1544)、コロンナ『ポリフィロの夢』ジャン・マルタン訳(1546)等を調査対象にする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者が出産・育児をした影響で、予定していたフィールドワークを削減し、研究発表のための海外渡航をとりやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、残されたフィールドワークと研究発表のために未使用額を使用し、必要に応じて、論文発表のための校閲料にも充てたいと考えている。
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