本研究最終年度となる平成29年度は、主に国王フランソワ一世の文化政策の調査として、国王使節としてイタリアに派遣されたジャン・デュ・ベレー一団の足跡を辿ると同時に、その際にラブレーを含めたデュ・ベレー一団と、現地の建築家、フランスの建築家との接触についての調査を進めた。ここで得られた結果をもとにしながら、ラブレー作品に登場する場所や建物の描写、古代、同時代の建築家の描写の中で史実が反映された部分を抽出し、作家の創造性を明らかにした。 本研究では、現実と虚構の往来による作家の創造性に重点を置いているが、その受容の一例として、ラブレーの翻訳者渡辺一夫が、ラブレー作品という虚構を翻訳時の日本の現実へ再導入する手法について、ラブレーの生地とされるシノン(フランス)で開催された祭典において発表を行った。祭典の聴衆は一般人を対象としていたが、著名なラブレー研究者や他分野の研究者、アーティストまで発表者が多様で、郷土史家、教員等を含んだ聴衆を交えて活発な議論が行われた。研究代表者も多方面からの好評を得た。また、この機会を利用し、ラブレーの第一作『ガルガンチュア物語』に登場するピクロコル戦争の舞台とされているシノン近郊を実地調査し、要地の配置や風景が500年前とほぼ変わりないことを確認した。テレビ局France3 Centre-Val de Loireのラブレー特集「Sur les traces de Rabelais」の取材を受けた。
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