研究課題/領域番号 |
15K16716
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
中村 隆之 大東文化大学, 外国語学部, 講師 (20510085)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フランス語圏文学 / カリブ海地域 / フランス海外県 / 脱植民地化 / 文学と政治 / エドゥアール・グリッサン / エメ・セゼール |
研究実績の概要 |
平成27年度に実施した本課題の成果について報告する。今年度は、エドゥアール・グリッサンが刊行した『アコマ』誌の研究を重点的に行うとともに、主に資料収集を目的としたフランスおよび同海外県マルティニック島への調査旅行を実施した。その成果は、大きく分けて3つある。 1)『アコマ』に関する学術論文の公開および研究発表の実施:「エドゥアール・グリッサンと『アコマ』(1)」と題した論文を『立命館 言語文化研究』27巻2-3合併号(2016年2月号)に公表した。同論文は『アコマ』創刊号を対象とした。その続編として『アコマ』2,3号を対象にした研究発表を行った(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・共同利用・共同研究課題「『プレザンス・アフリケーヌ』研究:新たな政治=文化学のために」第3回研究会)。また、大東文化大学語学教育研究所では、本研究課題の概要に基づく発表を行った。 2)「マルティニック学院」の訪問と聞き取り調査:上述の雑誌『アコマ』を刊行していた時代にエドゥアール・グリッサンが運営していた学校兼研究所「マルティニック学院(Institut Martiniquais d'Etudes)」(マルティニック島フォール=ド=フランスのディディエ地区)を訪問し、当時の状況について、同校の現責任者および元教員から話を聞くとともに、同校を見学した。 3)資料収集:マルティニック県立文書館およびシェルシェール図書館にて、20世紀に刊行された他の文芸誌を調査し、その一部を閲覧するとともに、写真資料として記録した。エメ・セゼールが刊行した『トロピック』のオリジナル版、1950年代に刊行された『カリブ海の水平線』、1970年代に刊行されたクレオール語新聞『大地に爪を立てろ』をはじめとして、数々の貴重な文献を収集する機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「おおむね順調に進展している」と判断する。その理由は、『アコマ』誌を対象にした研究を進め、その成果の一部を公表できたことにある。また、当初の予定どおり、マルティニックおよびフランスへの渡航を行い、資料収集を進めることができた。ただし、今後の課題もある。研究初年度に当たる平成27年度は、上述の雑誌の研究から着手した。その際、報告者は当該雑誌の全体を対象にした研究方法をとった。この方法は、研究の質と精度を向上させる反面、時間と労力を大きくかける。20世紀フランス語圏文芸誌の調査を課題とする本研究は、今後、対象とする雑誌に応じて、その方法を適宜選択する必要があるに違いない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は、大きく3つに分類できる。 1)資料収集、聞き取り調査の継続:今回のマルティニック島およびフランス調査旅行ですべての資料を収集できたわけでないため、引き続き、同様の調査をマルティニック島およびグアドループ島、フランス国内で続ける必要がある。ただしその際に、何を、どこまで収集すべきであるのかを、今回の調査旅行を踏まえて検討を重ねる必要がある。 2)資料の分類と分析:収集した資料を雑誌(新聞含む)ごとに整理し、その雑誌の特徴・傾向を把握し、分析作業を進める。 3)成果の公表:初年度に引き続き、研究成果の機会を捉え、積極的に公表する。今年度は具体的に、『アコマ』最終号を対象にした論文の執筆、同誌を題材にした国際研究発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度3月末に行ったフランスおよびフランス海外県マルティニック島への研究滞在の旅費の精算が、学内ルールにより次年度となったことが次年度使用額が生じた最大の理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の平成27年度3月の旅費の精算が平成28年度4月中に行われる予定である。また、5月下旬のセネガルの学会発表をはじめとして、旅費で研究費を使用する計画がある。
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