研究課題/領域番号 |
15K16719
|
研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
加藤 有子 名古屋外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90583170)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ポーランド文学 / ポーランド美術 / ホロコースト / 記憶 / 表象文化論 / 中東欧 / ユダヤ人 / 第二次世界大戦 |
研究実績の概要 |
2017年4月から9月半ばまで、前年度の9月から引き続き、本研究を基課題とする国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)により、ポーランド、ワルシャワのポーランド科学アカデミー文学研究所ホロコースト文学研究チームに客員研究員として滞在し、共同研究を行った。ワルシャワ滞在中、ポーランド国内外のホロコースト・メモリアルの現地調査(ヘウムノ、ベウジェツ、イスラエルのイェルサレム、リヴィウ)と図書館・美術館での資料収集と作品調査を進めたほか、海外の研究者との研究上の意見交換や今後の共同作業の打ち合わせを行い、さらに国際学会や学会誌で成果を発表した。 5月には、ワルシャワ・ゲットー蜂起に関するポーランドの集合的イメージ、とりわけ燃える建物から飛び降りる人のイメージについて、ドイツ側の記録写真、ポーランド文学における同じ場面の描写、目撃者であるポーランド人画家のグラフィック作品シリーズ、戦後の刊行物におけるそれらのイメージの流通を調査し、ハンブルク大学で開かれた中東欧の文化におけるホロコーストに関する学会で発表し、意見交換をした。6月には、ワルシャワのユダヤ史研究所から招待を得て、ホロコーストの日本における受容について、一般公開の特別講演を行った。 6月にはリヴィウに新しく作られたホロコースト記念碑、8月にはイスラエルのヤド・ヴァシェムなどホロコースト関連施設を見学し、研究者と交流をもった。8月にはマレク・エデルマン記念対話センター、パリのショアー・メモリアルを見学、資料調査。それぞれの研究者と研究上の意見交換を行った。ポーランドの研究者とともにヘウムノ絶滅収容所跡地の祈念式典にも参加し、ベウジェツ絶滅収容所跡地も見学した。 帰国後は、日本のホロコースト関連施設を見学(福山市、白河市)、それをもとに12月にNYの学会で日本のホロコースト受容について報告をした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度であったが、1月末に雪道で転倒し、手首を骨折して入院・手術したため、2月から3月にかけて予定していたポーランド渡航と資料収集、打ち合わせ、講演をキャンセルせざるをえなかった。このため、研究期間を1年間延長して、この渡航で遂行予定だった研究とまとめを完遂することにした。 1年の延長となったが、2月、3月にはポーランドのホロコーストを取り巻く状況が、ポーランド国民記憶院法の改正によって大きく変化しており、ホロコーストをめぐる言説の変容をさらに1年たどることもできるメリットがあると捉えている。また、2月から3月にかけて、ポーランドにおけるホロコーストの受容をめぐる重要な書籍が相次いで刊行されており、その成果を本研究にも反映させることができる。怪我による1年の延長を逆に活かして、研究の完成度を高めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究を基課題とする国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)との共催として、ポーランドを主とする海外研究協力者を複数名招聘し、日本の研究者とともに、11月に2日間の国際シンポジウムを行う(一般公開)。その成果は自身の論考とともに日本語で書籍として刊行し、本研究のまとめとする(刊行は2019年度見込み)。 5月・6月にポーランドに渡航し、研究者と研究上および国際シンポの打ち合わせ、資料収集、論文執筆を行う。 日本のアウシュヴィッツ平和博物館のニュースレターに連載することになっており、情報の少ないポーランドの最新のホロコーストのメモリアルについて、一般向けに解説し、紹介する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
最終年度である2017年2月・3月に研究のまとめとして、ポーランド渡航と資料収集、研究者との意見交換、招待講演を予定していたが、1月に骨折して入院・手術したために延期せざるをえなかった。このため研究を1年延長し、予定していた旅費を繰り越した。次年度のポーランド渡航に利用する。
|