研究課題/領域番号 |
15K16720
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
好川 聡 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10456816)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 唐代文学 / 唐詩 / 異文化 / 左遷 |
研究実績の概要 |
平成27年度は三年計画の一年目にあたっており、関連資料の収集や精読などの基礎固めを行った。唐以前は無視されていた南方独特の風土や異文化は、中唐の文人たちによって盛んに描かれていくようになるが、初唐の沈セン期、宋之問、杜審言などが南方に左遷された際にも、異域独特の風土に着目した詩が見られ、それらの作品の精読・整理を行った。こうした異域描写は当時の文壇からは傍流にあたる下級官僚(「宦遊」といわれる地方官)によってもたらされた新しい分野の一つであるが、中唐のものと比べると、その表現は異文化にまでは踏みこんでおらず、唐代の中で段階的に異域描写が深まっていくさまが見てとれる。続く盛唐の詩を精読していく中で、従来の詩人で時代を区切る文学史ではなく、安史の乱を契機に李白・杜甫が詩の本質的な変化―未編年的な詩から編年できる詩へ―を起こしているという大きな問題を発見し、10月に開催された日本中国学会第67回大会で発表した(「唐詩変革」)。この発表を通じて得られた成果をまとめて学会報に投稿し、掲載が決定された。また、この一年は韓愈詩研究会で各担当者から提出された原稿の修正を行い、次年度以降発行予定の川合康三・緑川英樹・好川聡編『韓愈詩訳注第二冊』(研文出版)の編集にあたった。第二冊は韓愈が左遷地の陽山を旅立って以降の詩から、都長安に戻って後の詩が収録されており、研究課題の一つである「左遷から帰還後の作品を検討して、左遷を経た士大夫の文学がどのような成長を遂げたか」と大きく関わる時期である。編集作業を通じて得られた知見を来年度以降論文にまとめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『韓愈詩訳注第二冊』の編集作業にあたったため、当初の予定とは順番が多少前後したものの、おおむね予定通り作品の精読を行うことができた。学会で発表を行い、投稿論文も掲載が決定した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで通り、唐代の文献を幅広く精読していく。27年度に初唐の異域描写の論考を発表し、編集作業にあたった韓愈詩を重点的に研究していく予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
257円というわずかな金額のため、次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
書籍代の一部として使用する。
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