研究課題/領域番号 |
15K16722
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大渕 貴之 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (40614764)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 対偶 / 声律 / 古今事文類聚 / 文之玄昌 |
研究実績の概要 |
当初計画に従い、善本とされる南宋紹興年間刊本『白氏六帖事類集』(傅増湘旧蔵、天理図書館蔵本。新興書局、1969年影印)を基礎に北宋刊宋元逓修・元末明初印『白氏六帖事類集』(陸心源旧蔵、静嘉堂文庫蔵本。古典研究会叢書・漢籍之部40~42、汲古書院、2008年~2012年影印)及び宋刊『新雕白氏六帖事類添注出経』(台湾国家図書館蔵本の影印資料をJSPS科研費24720165の助成により同館より入手)を参照しつつ、対偶の抽出を行なった。 ここに言う「対偶」(或いは対偶を構成する句)について、本課題の申請時には、出典未詳のもの或いは出典となる経書等の本文を、それに基づく創作と言えるほどに変形したもののみを想定していた。しかし、抽出作業を行なう過程で、申請者が虚字等の単なる省略(特段の意図なき省略)と見なし、抽出の対象と見なしていなかった対偶(或いは対偶を構成する句)のうちに、採録者が声律上の工夫から意図して省略等を施した、言わば創作とも言うべきものが含まれる可能性に気付いた。本課題を当初計画より、より正確かつ学術的意義を有するものとして遂行する契機を得た一方で、対偶抽出を改めてやり直す必要に迫られ、作業進度の上では遅滞を生じた。 また、当初予定の抽出作業を進める過程で、『古今事文類聚』所収の対偶句との関連性にも注意が至った。従来、類書所収の対偶句等を自己の創作に活用、流用する現象については、現存する各種詩文集(総集、別集等)に確認することが困難であったが、文之玄昌の詩文中に『古今事文類聚』所収句の流用に近い利用実態を窺わせる事例を発見し、「書物・出版と社会変容」研究会鹿児島大会(2015年12月,鹿児島大学)に於いて「文之玄昌の詩作参考書」と題して口頭発表を行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、創作された対偶と見なさず、出典の本文に対する特段の意図なき省略と考えていた対偶(或いはそれを構成する句)のうちに、声律上の検討を経て意図的な変形が加えられた可能性のあるものを見出し、調査方法の見直しと調査のやり直しに迫られたため。 なお、調査の重点を最も特徴を有すると考える政事関連の部立てに置き、収載対偶と続纂類書における受容の様態についての解明を急ぎたい。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の逐次調査よりも、政務用参考書と想定する本書中、最も特徴を有すると考える政事関連部立ての詳密な調査を優先して行ない、学会発表を経て論文作成に至りたい。
|