研究課題/領域番号 |
15K16722
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大渕 貴之 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (40614764)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 唐令 / 百道判 / 判体文研究 / 政務用類書 |
研究実績の概要 |
私は先に『白氏六帖』に収載される対偶が、白居易自作の判(司法・行政の実際政治、或いは倫理・経義上の諸問題について判断を示す文章ジャンル)中の対偶と一致または極めて類似する事実を指摘し、該書が本来的に政務用類書であることを主張していた。その際に、『白氏六帖』に唐代の律令格式が複数収載される事実を以て傍証としていたが、それが決して網羅的ではなく、随意に採録されたとでも言うべき状況を呈していたことについては、明確な説明を成せないままでいた。 本年度は『白氏六帖』収載の唐令に対して再度分析を行ない、以下の結論を得た。すなわち、唐令の採録は、法令用語として一般の語義とは異なる意味で使用される術語を含む条文の採録といった一部の例外を除き、白居易が吏部試に応じるべく準備、創作を行なった百道判の判題設定のために必要な範囲で採録されたがため、その採録状況に随意性が見られたのである。このことは、本課題研究の主眼である『白氏六帖』収載対偶が真に白居易の創作であるのかという問題考察にも、白居易「百道判」との関わりが明確になったことで寄与するものと考える。 上記の今年度の成果については、2016年11月に中山大学(中国広州市)で開催された第五届中国文体学国際学術研討会に於いて、「『白氏六帖』之類書属性考―兼示其作為唐代判体文研究資料的可能性」と題して学会発表を行なうと同時に、同題の論文を学会開催時の論文集に発表した。中国を始めとする各国の研究者に対し、本課題研究の意義を広く知ってもらうとともに、課題研究遂行のための助言を得ることができた。 また、上記の成果とは別に、本課題研究遂行の途上、偶然発見するに至った類書の利用実態という附随するテーマについて、同年12月に復旦大学(中国上海市)で開催された中日日蔵漢籍研討会に於いて「日本近世詩僧文之玄昌所用詩学参考漢籍小考」と題する研究発表を行ない助言を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『白氏六帖』収載の対偶表現について、その悉皆的調査には力が及んでいないものの、唐の令採録状況に対する考察を通して、『白氏六帖』と白居易判との関係性を従来の自己の研究より更に明確にできたことで、収載対偶についても白居易との関連性をより強く推認させる成果を示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
『白氏六帖』収載対偶の作者問題について、後代の続纂類書に於いて如何に考えられてきたのか明らかにしたい。これによって、今年度までの成果により推認する白居易創作の仮説について考察を深め、その妥当性等を客観的に吟味する。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国書の購入にあたり、年度末になって予期しない納期の遅れが判明し、当該図書の購入を次年度に繰り越さざるを得なかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に、予定していた図書の購入を行なう。
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