研究実績の概要 |
本研究は、その目標を①『白氏六帖』収載対偶の全体像を明らかにすること、②それら収載対偶の作者について考察すること、③続纂類書に於ける収載対偶の受容の様態を明らかにすること、以上の三点に置いていた。このうち、②の作者解明の問題は最も困難であると同時に、仮に白居易の手にかかると証明可能であった場合、それは大量の白居易佚文の発見に直結することから、本研究中最も影響力のある内容となることが予期されていた。前述の①や③は、全て②の作者問題の解明に資するものとして課題設定がなされていた。 『白氏六帖』収載対偶は、中国学諸分野の研究に於いて、従来ほとんど見過ごされていた。前年度までの本研究に於いて、まずはその存在を日中両国の学界に対し示し得たことは、大きな成果であったと言える。第五届中国文体学国際学術研討会(中山大学,2016年11月)に於いて、『白氏六帖』収載対偶と白居易自作の判体文との間に大きな関連性が予期されることを示し、学術的関心を惹き起こし得たことも成果の一つに数えうる。 最終年度は、先述の文体学国際研討会に於いて指摘された本研究の欠点、すなわち収載対偶と白居易判体文の関連性についてより精細な証明を行なうのに必要な両者の文体研究について、その有効な手法の検討を行なった。これについては、本研究期間の期限を迎えてなお明確な成果を得るには至っていない。虚字の用法上の特徴並びに白居易判体文の段落構成上の特徴という二つの視点から今後の研究を継続して行ない、対偶の作者解明に挑みたい。 なお、最終年度に於いては前年度に引き続き、本研究の途上、附随して発見するに至った類書一般の問題に関連して、1件の招待講演と2件の口頭発表を行なった。いずれもその内容に類書による文献伝存、文献受容に関する研究を含む。
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