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2017 年度 実施状況報告書

南朝梁・蕭綱文学集団における「現実」と「表現」

研究課題

研究課題/領域番号 15K16723
研究機関高崎経済大学

研究代表者

大村 和人  高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (80431881)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード南朝斉梁 / 蕭綱 / 艶詩 / 公讌詩 / 率爾詩
研究実績の概要

今年度に取り組んだのは、南朝斉梁時代の「率爾詩」である。
南朝斉梁時代の艶詩(以下、斉梁艶詩と略す)の特徴の一つとして「遊戯」性が挙げられ、それらの詩歌群が厳しく批判される原因となっている。しかし、斉梁艶詩の「遊戯」性の実質についてはまだ研究の余地が残されている。本研究では「率爾」という語を題名に持つ作品を「遊戯」的艶詩の一例として取り上げた。
「率爾」とは何らかの刺激を受けたその場で反応する、という意味である。蕭綱は二首の率爾詩を残しているが、そのうち「率爾爲詠」詩は艶詩である。この作品や他の斉梁時代の率爾詩を分析した結果、それらには「視点の大胆な転換」という共通する技法が用いられていた。これは語り手が視点を大胆に転換し、その前後のいずれか一方の内容を「幻視」するというものであり、転換の前後で描かれる対象は同じで、その異なる二つの側面や階層を提示しようとする。この視点の大胆な転換は、対象を多角的、多層的に捉えて表現し、各面・各層を際立たせることと言い換えることができる。このような技法は斉梁時代の他の艶詩にも認められることから、それが「率爾」に制作された「率爾」詩により露わに出現したと考えることができる。
もう一首の蕭綱の率爾詩は「三月三日率爾成詩」であるが、これは三月三日の曲水の宴を舞台とする作品である。曲水の宴は公讌詩の題材として当時既に定着していたが、蕭綱の「三月三日率爾成詩」は遊戯性と艶詩性が強い。これも率爾詩であるが、そこに見られる「視点の転換」はやや弱い。しかし、そこに見える遊戯性と艶詩性の根底には伝統的な祝祭を下敷きにしており、曲水の宴と王朝の繁栄を謳歌する公讌詩と通低する伝統的内容を持っている。蕭綱の二種類の率爾詩の一方には、時代に共通する「視点の大胆な転換」の技法が表れ、もう一方には伝統的な祝祭性が表れており、彼はそれらを使い分けていると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の前半の研究は、「南朝斉梁「率爾」詩考」と題して、2017年12月2日に開かれた六朝学術学会第35回例会で口頭発表した。そして、質疑応答で提出された意見も取り入れ、発表内容をまとめた論文を現在執筆中であり、2018年中に学術雑誌に投稿する予定である。また、後半の研究も現在執筆中であり、同様に発表する予定である。

今後の研究の推進方策

上記の平成29年度までの研究の成果を踏まえ、本研究の最終年度となる平成30年度に取り上げるのは、梁代の「連珠」作品である。応募者の過去の論考では蕭綱の臨終作品を取り上げたが、その中には「連珠」作品が含まれていた。これは政治に対する諷刺や道徳の箴言を述べる美文である。梁代にこのジャンルの制作が流行したが、その作者の中には蕭綱の文学集団のメンバーも含まれる。彼らの「連珠」作品の内容や表現を分析し、艶詩や蕭綱の臨終作品の特徴との関係を考察したい。
そして本研究のテーマである「現実と斉梁艶詩との関わり」という視点から、蕭綱ら斉梁時代の艶詩詩人たちの様々な作品の分析をまとめて、彼らの文学の本質の一端を明らかにする予定である。

次年度使用額が生じた理由

応募者が異動することになり、平成29年度助成金の使用計画に変更が生じたために残額が生じ、次年度使用額にまわすことになった。その分は物品費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 南朝斉梁「率爾」詩考2017

    • 著者名/発表者名
      大村和人
    • 学会等名
      六朝学術学会 第35回研究例会
  • [備考] 六朝学術学会ホームページ

    • URL

      http://liuchao.gakkaisv.org/

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公開日: 2018-12-17  

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