研究課題/領域番号 |
15K16726
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
置田 清和 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (70708627)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒンドゥー教 / サンスクリット古典文学 / ヴィシュヌ教 / インド思想史 / ベンガル文学 / インド古典文学 / 文献学 / 文芸論 |
研究実績の概要 |
1、京都大学文学研究科インド古典研究室の横地優子教授、ソームデーヴ・ヴァースデーヴァ特定外国語担当教授とともに読書会を開催(2016年5月31日~7月28日)。ジーヴァ・ゴースワーミー(16世紀)著『プリーティ・サンダルバ(愛についての論考)』110章の英訳を作成した。 2、上記の読書会の成果を国際学会(マドラス大学、CPR Institute of Indological Research,インド、2017年1月6日~8日)において発表した。 3、スカイプを通してシマンタ・ロイ氏(The Bangla Language Institute, Independent University Bangladesh)とともに読書会を開催(2016年4月24日~7月28日)、アキンチャナ・ダーサ(18世紀)の『ヴィヴァルタ・ヴィラーサ』第二章の英訳を作成。 4、スカイプを通してS.ブヴァネシュヴァリ博士(CPR Institute of Indological Reserach)、眞鍋智裕博士(早稲田大学)とともに読書会を開催(2017年2月4日~3月5日)。マドゥスーダナ・サラスヴァティー(16世紀)の『パラマハンサ・プリヤー』の英訳を開始した。 5、昨年度開催したジーヴァ・ゴースワーミー著『プリーティ・サンダルバ』111章の読書会の成果を日本印度学仏教学会(2016年9月3日、東京大学)において発表した。また発表した論文をJournal of Indian and Buddhist Studiesにおいて出版した。 6、昨年度開催した『チョイトンノ・バガヴォト』、『チョイトンノ・チョリトムリト』の読書会の成果を日本南アジア学会(2016年9月25日、神戸市外国語大学)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、ジーヴァ著『プリーティ・サンダルバ』110章の英訳が完了した。昨年度準備した111章の英訳とともに、ヴィシュヌ教ベンガル派における信愛に基づく美的経験(bhakti-rasa)の概要を把握し、その特徴を国内外の学会で発表することができた。 2、『カーマ・スートラ』、『アルタ・シャーストラ』、『マヌ法典』の研究に基づき、南アジアの古典文化の中で婚外関係がどのように評価されていたかの大枠を把握することができた。 3、2017年1月にインドのチェンナイにおいて開催された国際学会において『バーガヴァタ・プラーナ』の研究者たちとのネットワークを広げることができた。その結果、学会参加者とbhakti-rasaに関する読書会を立ち上げることができた。 4、アキンチャナ・ダーサ著『ヴィヴァルタ・ヴィラーサ』第二章の読書会を通して、18世紀当時ベンガル派においてクリシュナ神の婚外説、既婚説がそれぞれどのように評価されていたのか、その一部を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1、オックスフォード大学ヒンドゥー教研究所、京都大学白眉センターの協力を得て、オックスフォード大学トリニティ・カレッジにおいて2日間にわたるワークショップを開催。近世(16世紀~18世紀)におけるクリシュナ神信仰の聖地ブリンダーヴァンの歴史的、文化的発展の課程を解明する。 2、これまでの研究をまとめ、専門書として出版するための執筆活動に集中する。本の構成は以下の通りである。【第一章】問題提起と方法論の提示【第二章】主にジーヴァ著『プリーティ・サンダルバ』110章、111章に焦点をあて、ベンガル派における美的経験論とアビナヴァグプタ、ボージャデーヴァなど、ジーヴァ以前の思想家との関係を明らかにする。【第三章】ルーパ・ゴースワーミー著『ウッジワラ・ニーラマニ(燦蒼玉)』14章(基本的感情)に焦点をあて、クリシュナ神と牛飼い乙女の婚外関係における愛情の分析を行う。【第四章】『カーマ・スートラ』、『アルタ・シャーストラ』、『マヌ法典』、サンスクリット詩論書において婚外関係がそれぞれどのように評価されているかまとめる。【第五章】ルーパ著『ウッジワラ・ニーラマニ』1章(俳優の分類)、3章(女優の分類)における婚外説とジーヴァの注釈書における既婚説を比較・対照する。【第六章】ヴィシュヴァナータ・チャクラヴァルティー著『既婚説否定論考』、アキンチャナ・ダーサ著『ヴィヴァルタ・ヴィラーサ』第二章、ヤドゥナンダナ・ダーサ『カルナーナンダ』第五章をもとに、17世紀、18世紀のベンガル派においてクリシュナ神の既婚説、婚外説がどのように評価されていたかまとめる。【第七章】『梵天讃歌集』に対するバクティヴィノーダの注釈書に焦点をあて、19世紀に提出されたクリシュナ神の既婚説・婚外説折衷論を分析する。【第八章】クリシュナ神信仰の倫理的課題にベンガル派の思想家たちが対応してきた歴史的課程ををまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
京都大学白眉センターから研究費を受給したため、科研費からの出費を削減することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
オックスフォード大学で開催予定のワークショップに使用。
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