研究課題/領域番号 |
15K16732
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
窪田 悠介 筑波大学, 人文社会系, 助教 (60745149)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 範疇文法 / ハイブリッド範疇文法 / 統語論 / 意味論 / 削除現象 / 動的意味論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、研究代表者が提案している言語理論であるハイブリッド範疇文法に動的意味論を組み込み、削除現象の分析を行うことである。平成29年度は、本研究を含む、ハイブリッド範疇文法の研究に一つの大きな区切りがついたので、年度の前半はこれをまとめ学術書として出版する計画を重点的に進めた。また、年度の後半、米国の研究協力者を日本に招聘し、国内の関連研究を行っている研究者と定期的に打ち合わせをするなどして研究を集中的に進めた。この他に、年度末に筑波大学でワークショップConceptual and Methodological Alternatives in Theoretical Linguisticsを開催した。
学術書出版の計画は、海外の著名な学術出版社と出版契約を結ぶところまで進んだ。研究を進めるにつれ、本研究課題の中心的対象である削除現象と、本研究課題に取りかかる前に取り組んだ等位接続構文との間に様々な関連性があり、また、この二つの現象が複雑に絡み合うような言語データが存在することが分かってきた。これらの複雑な現象は先行研究ではほとんど見過ごされており、また、多くの先行研究の提案にとって問題となるものであるが、その多くのものに関しては、ハイブリッド範疇文法では簡潔な分析が可能であるという見通しが立っている。平成29年度は、これらの現象に関して分析のたたき台を作る作業を重点的に進めた。平成28年度から執筆を進めていた草稿を含むいくつかの新しい成果は、論文として学術誌に投稿するという当初の予定を変更し、学術書の一部とすることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度後半に米国の研究協力者を招聘し、本研究を集中的に進める予定であったが、招聘の事務手続きや日程調整に時間がかかり、実現が遅れた。このため、招聘中に進める予定であった国内の関連研究者との打ち合わせなどが当初の予定通り出来なかった。このことにより、研究協力者との打ち合わせの結果に基づいて進めることを予定していた部分の進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業期間を延長し、米国の研究協力者の招聘を平成30年度に延長した。この間に引き続き集中的に打ち合わせを行うことを計画している。その後、打ち合わせの結果に基づき、学術書の草稿を平成30年度末をめどに完成させる予定で準備を進めていく。また、国内の関連研究者との打ち合わせを基にした研究は、別個の学術論文としてまとめるに足る内容となる見込みが現在得られているため、投稿論文の準備を、学術書の草稿の執筆と並行してできる限り進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は学術書の執筆の準備の作業に主に取り組んだ結果、いくつかの重要な成果を得たが、これらはすぐに学会発表の形で公表できる性質のものではなかったため、海外での学会発表を見送り、これらの成果を執筆中の学術書の中に組み込む作業に専念したため、次年度使用額が生じた。
補助事業期間を延長した平成30年度の前半まで米国の研究協力者を招聘することにこの予算をあて、ハイブリッド範疇文法における削除現象の研究を深化させ、本研究課題をより精緻なものとし、成果をとりまとめた上で研究目的を達成する。
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