本研究の目的は、厳密な数学的基盤を持つ言語理論であるハイブリッド範疇文法に、削除現象や照応現象の意味解釈の包括的な理論である動的意味論を取り込むことで、統語論と意味論のインターフェースに関わる様々な複雑な言語現象の解明を目指すことである。特に、「依存型意味論」と呼ばれる証明論的手法に基づいた新しいタイプの動的意味論を採用することで、従来のハイブリッド範疇文法では分析が困難であった現象を扱うことに重点を置いて研究を進めた。
依存型意味論をハイブリッド範疇文法に組み込むことが比較的容易であることは研究の初期段階で判明したため、初年度の学会発表でこの成果を報告した。その後の研究においては、本研究の遂行と同時並行的に進んだ依存型意味論の研究の進展に合わせて、削除現象や等位接続現象の分析を進めた。この結果として、主に英語の動詞句削除に関わる諸現象に関する、ハイブリッド範疇文法における包括的な扱いに関して見通しが立った。この研究内容は、国際学会での発表の他に、2019年度出版予定の学術書の一部として発表する予定である。
最終年度である本年度には、米国の研究協力者を招聘し、研究開始当初課題として設定したものの、解決のめどが立っていなかったいくつかの問題に関して、国内の関連研究者との綿密な打ち合わせを実施した。この結果、有望な解決策を得ることができたため、その成果を国際学会での口頭発表に投稿し、採択された。この研究は引き続き国際共同研究として続け、成果をまとめて学術雑誌への論文の投稿を行う予定である。
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