研究課題
東インドネシア地域のオーストロネシア語族の言語は、この語族の歴史を考える上で極めて重要である。なぜなら、フィリピン諸語・西インドネシア諸語で存在した動詞形態論が消滅し、かわりに動詞連続構文が発達したと想定されるからである。しかし、両者の関係を実際に比較検証した研究はない。そこでこの研究計画では、東インドネシア諸語であるラマホロット語の動詞連続構文を、フィリピン諸語のタガログ語との比較を通して分析する。具体的には[I]ラマホロット語の動詞連続構文を記述的に分析したうえで、[II]タガログ語のフォーカス・システムと比較し、[III] 両者の共通点・相違点とその背後のメカニズムを明らかにする。本研究計画は、[A]自然談話による動詞連続構文基礎データ、[B]聞き取り調査質問票による比較対照データを収集し上記課題に答えようとする。平成29年度は研究計画の最終年として基礎的研究に加えて[A][B]に基づくデータ収集とその整理、論文執筆を行った。平成29年9月にインドネシア、平成29年8月にフィリピンで調査を行いデータを収集した。その成果を日本言語学会、国際RRG学会などで発表した。これらの学会発表の成果は現在、論文化しているところである。さらに、ラマホロット語の節構造を理解するために重要な指示詞の問題、タガログ語のプロソディーについて論文を発表した。期間全体として、ラマホロット語の動詞連続構文のいろいろ、動詞連続構文の特殊な文法化パターンを発見し、その背景に、両言語の節構造に関する違い、特に、補文構造の違いと項・付加詞の区別の違いがあることが判明した。これらの成果を調査票、自然談話、実験的手法を駆使して明らかにできた。このように本年度遂行した研究は、論文化の途中であるものの、研究目的を達成するのに十分なものであった。国際学会を主催し国際学会・国内学会でその成果を公開した点も意義深い。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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