研究課題/領域番号 |
15K16735
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
渡邉 綾 福井大学, 語学センター, 助教 (10617955)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 質的研究 / インタビュー / ナラティブ / 社会言語学 |
研究実績の概要 |
【研究の目的】 本研究は、医療現場における外国人患者の医療体験を調査し、患者の視点からみた受け入れの際の医療現場の現状と今後の課題を探ることを目的とする。医療現場における日本在住外国人患者受け入れに関する研究の多くは、医療従事者側の視点を基に分析されており、外国人患者を対象とした調査は質問票形式が多く、彼らが直面する問題やニーズを十分にくみ取れている研究は多くない。本研究では、外国人患者を全人的に理解するためNarrative Based Medicine(物語と対話に基づく医療)の考えを導入し、インタビュー調査を用いて外国人患者の体験についての語りを分析することで、当事者の視点から明らかにする。本研究成果は、多様な患者のニーズに応じたサービスの多様化の必要性等、医療現場の課題を明確にし、患者参加型医療の実現に貢献できるものである。 【平成28年度の研究実施成果】 今年度は、外国人患者への研究参加依頼、インタビュー調査の実施、データの整理等を行った。日本在住の外国人患者・元患者に協力を依頼したところ、国籍、性別、在住期間等が異なる11名の外国人患者・元患者を対象にインタビュー調査を行うことができた。なお、インタビューを行う際には、事前に本研究の説明を行い、同意書にて同意を得られた対象者にのみ、インタビューを実施した。 今年度までに得られたデータを基に、日本質的心理学会において、「外国人患者の医療体験に関するインタビュー調査における共感と反感の技法と共同構築」という題目で口頭発表を行った。談話心理学に関心のある研究者からフィードバックを受け、今後の分析に取り組む際の有意義な視点を得た。また、昨年度行ったポスター発表を基にListening to foreign patient voices: A narrative approachという題目で福井大学医学部研究雑誌に投稿し受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インタビュー調査は約1時間半から2時間程度の時間を使って行った。今年度は音声録音のみのデータ収集となった。日本在住の外国人11名の医療体験に関する語りを収集した。医療者の協力のもと、病院を訪問する外来患者にも研究協力を依頼し、7名の参加可能な協力者がおり、そのうち2名にインタビューをすることができた。その他の研究協力者は県内外に住む外国人留学生や教員など様々な背景を持つ参加者に協力頂いた。インタビュー調査をするにあたり、倫理審査委員会から承認を得て、適切な説明を行って実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでのインタビュー調査により集まったデータを基に分析作業を進めていきたいと考えている。そのために、これまで収集してきたインタビューデータのより詳細な書き起こし作業を進めると共に、興味深い現象について観察を深め、会話分析の手法を用いて分析を進めていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりもデータの分析が遅れているため、質的研究分析ソフトの購入を控えた。次年度必要となるため、購入する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
1.予算の総額:本年度の繰り越し分 + 次年度の予算 2.予算執行の内訳①図書・物品等、②ソフト:質的研究ソフト、③旅費:国内学会出張+国内会話分析データセッションへの参加、研究協力者へのインタビューの際の交通費、④謝礼
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