研究課題/領域番号 |
15K16736
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宇都木 昭 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (60548999)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 韓国語 / 朝鮮語 / 韻律 / 音調 / イントネーション |
研究実績の概要 |
朝鮮語の諸方言のうちには,ピッチが弁別的な機能を担う方言とそうでない方言とがある。前者の代表として慶尚道方言が挙げられ,後者の代表としてソウル方言を挙げることができる。本プロジェクトで扱うF0低下現象に関して,前者のような方言を対象とする場合には,音調クラスとの関係を検討することが不可欠である。 今年度は,慶尚道方言に注目し,とりわけ慶尚南道馬山・昌原方言を対象とした調査を行った。目的語プラス動詞を実験文の基本構造とし,目的語にフォーカスを置いた場合,動詞にフォーカスを置いた場合,中立の場合の三通りの発話を得た。このとき,動詞に多様な音調クラスのものを用いることで,音調クラスと文レベルの韻律との関係を調べた。調査当初の予測は,中期朝鮮語の上声と対応する音調クラスにおいて,文レベルでも語頭のLが維持されるのに対し,それ以外のクラスではLが現れないというものであった。これは,上声に対応するクラスの語頭L音調が語彙的に指定されたものであり,語彙的に指定された音調は一般に削除されにくいという仮定にもとづいている。しかし,調査の結果,音調クラスとLの出現の相関は有意ではなかった。この結果は,東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所で開催されたシンポジウムにおいて発表した。 当初の予測と異なる結果が現れたことから,仮説の再検討,および,世代差などの変異を考慮した計画の再検討が今後必要となる。 一方で,ソウル方言および日本語の研究計画立案を引き続き進めており,今後も計画立案および調査の実施をしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にも述べたとおり,当初の仮説を支持ずる結果がこれまでの調査の中で得られなかったことから,計画の再構成を余儀なくされている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの仮説を見直す上で,多言語を含めて韻律に関する先行研究を広く検討したい。その上で新たな仮説を立て,朝鮮語の諸方言および日本語の諸方言の調査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内で開催される国際シンポジウムでの発表に招待されたために,ここで発表することとした。そのため,内容的に重複しうることから,当初計画していた国際会議での発表(米国開催)をとりやめたため,残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
老朽化した分析用コンピュータを買い替える予定である。
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