研究課題/領域番号 |
15K16737
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安井 永子 名古屋大学, 文学研究科, 講師 (30610167)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | マルチモーダル / 会話分析 / 繰り返し / ジェスチャー / 参与 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、日常の多人数会話において、他者によって産出された発話やジェスチャーを、別の参与者が直後に繰り返したり、別の連鎖において再生したりする現象を検討するものである。それにより、日常会話における「参与」の達成の様々な仕方について探ることを目的としている。 計画通り、28年度は、(1)データ収録及び会話データの書き起こし、(2)データ観察と整理、(3)先行研究の整理、(4)次年度に向けた発表の準備を行った。詳細は以下の通りである: (1)データ収録では、友人間の食事場面や、大学生による会議場面を、複数のビデオカメラを用いて収録した。その後、全体を観察し、専用のソフトウェアを用いて関連箇所の書き起こしを行った。 (2)収集し、書き起こしたデータの観察を行い、関連する現象のコレクションを作成した。 (3)それに加え、分析のための理論的枠組みを理解し、整理するため、会話分析、マルチモーダル分析研究、ジェスチャー研究の文献より関連研究を集め、まとめた。 (4)収録したデータのデータセッションを行ったり、データの観察に基づく考察について関連研究会で発表を行ったりするなど、他の研究者と議論を行う機会を複数回設けた。それにより、次年度以降の課題が明らかになった他、次年度に行う学会発表やその他の研究発表の準備を行うことができた。学会は次年度7月に予定しているため、それまでにデータ観察と考察をさらに進めていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、データ収録とその書き起こし、先行研究のまとめ、データ観察の考察段階についての研究会での発表、および、次年度への準備を行うことができたため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。しかしながら、当初、本研究課題は発話の直接の受け手ではない「傍参与者」による繰り返しと会話への参与に焦点を当てる予定であったが、先行研究の整理やデータ観察を通じ、発話の「受け手」による発話やジェスチャーの繰り返しについて興味深い現象が多く観察され、特に発話の受け手によるジェスチャーの繰り返しについてはまだ研究の余地が多く残されていることが明らかになった。そのため、今後は研究計画を少し変更し、発話の受け手の振る舞いにも焦点を当てる必要があると考えられる。また、まだ収録したデータの量は十分とは言えず、日常におけるあらゆる活動を伴う会話場面や、参加人数の多い会話の収録も必要となるため、今後もデータ収録とその書き起こしは、分析等と並行して行っていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、収録したデータと書き起こしに基づいて、具体的に分析を進めていき、その結果をまとめていく。ただし、上記の通り、計画には少し変更が必要となる。当初は発話やジェスチャーを会話の「傍参与者」(発話の直接の受け手ではない参与者)が繰り返すことにより達成する参与の形にのみ焦点を当てる予定であったが、先行研究の整理やデータ観察を通じ、発話の「受け手」による発話やジェスチャーの繰り返しについて興味深い現象が多く観察され、特に発話の受け手によるジェスチャーの繰り返しについてはまだ研究の余地が多く残されていることが明らかになった。そのため、今後は傍参与者だけでなく、受け手による繰り返しとそれが達成する行為についても分析を行う予定である。また、データ収録も引き続き、分析と並行して行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画書作成当時は、初年度である今年度も国際学会に参加することを考えていた。しかしながら、家庭の事情により、予定していた学会に参加することができなかった。それにより、旅費の使用が大幅に減ったことが、次年度使用額が生じた大きな理由である。
|
次年度使用額の使用計画 |
29年度は7月に国際学会への参加を予定しているため、28年度からの繰越し金は主に旅費に当てる予定である。また、学会発表を行う研究成果を英語で論文としてまとめ、ジャーナルに投稿予定であるため、英文校閲にかかる費用にも充てる予定をしている。
|