研究課題/領域番号 |
15K16739
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西本 希呼 京都大学, 白眉センター, 助教 (10712416)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 言語多様性 / 生物多様性 / 無形財産 / 在来知識 / 記述言語学 / オーストロネシア語圏 / 植物利用 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)これまでに引き続きマダガスカル語諸方言、ルルツ語(仏領ポリネシア)、ラパヌイ語(イースター島)の体系的記述を行い人称代名詞、限定詞、動詞形態論など同語族に特徴的な項目を重点的に分析をすること、(2) オーストロネシア語圏の他の地域を自然利用や生物に関連する語彙に限定して広域調査を行い、対象地域の生物多様性と言語多様性の関連性を明らかにすることである。 本年度は、広域調査を行うために、これまで調査してきた、マダガスカル、タヒチ、イースター島に加え、新しい地へと調査地を拡大した。ミクロネシア連邦のチューク島に短期間ではあるが3回に分けて調査基盤つくり、予備調査を行った。現地では、友好な信頼関係を築くことができ、チューク語に関する500語ほどの書きとりと録音、現地の植物で食用や薬用にしているものに関する語りをビデオ撮影した。これは、研究計画に書いた、ドキュメンテーション作りのためである。また、前年度までのルルツ島で行われている伝統農法が、ほかのオセアニアの島でも似たような方法で行われていることがわかり、有用な手がかりとなった。 記述言語学的側面からは、タンルイ語の動詞カテゴリの分析を進めた。また、命名の習慣、集めた民話の書き起こしと対訳をそれぞれ、本の一部として出版した。 マダガスカルの植物利用に関しては、2015年7月に南アフリカ共和国で開催された国際民族経済学学会で発表を行い、植物学、人類学、民族植物学、オセアニア研究者など、本研究に関連する世界の研究者と交流ができたことは、大変有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画と目的では、広域調査を行い、オーストロネシア語圏の言語とその土地の植物利用や自然認識などを、現地で調査を実施し記述と分析することである。そのためには、必然と、現地へ赴き、その土地をよく知り、信頼関係を構築して、インフォーマントとなる研究協力者を見つけなければならない。前期・後期の授業期間中は短期調査に限られており、何度か新しい調査地へ行ったのだが、深く立ち入った調査を行うにはまだ時間がかかりそうである。 それでも、短期間の間で、インフォーマントと研究調査の基盤となる場所を見つけることができ、少しでも言語の調査と植物利用に関する映像撮影ができたことは大きな収穫である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、広域調査といっても、ミクロネシア連邦にしか結局行くことができなかったが、今後、残りの2年はできる限り(これまで調査してきたマダガスカル、仏領ポリネシア、イースター島を含め)多くの土地で調査をしたいと思う。ただ、それには予算にも問題があるが、新たな土地につき、ただちに研究協力者を見つけてこちらの知りたいことを得ることは難しいという課題がある。調査地では、基礎語彙に加えて、現地の植物、魚、自然現象(高潮、月の満ち欠け、南十字星、暦、占星術など)の資料を重点的に集めることに力を入れたい。 また、現在これまでのデータを整理してまとめているので、マラガシ語タンルイ方言の記述と分析を成果の一つとして出版の準備を進める。
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