研究課題/領域番号 |
15K16739
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西本 希呼 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (10712416)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生物多様生 / 植物利用 / 資源利用 / フィールド言語学 / オーストロネシア諸語 / オセアニア地域研究 / 数の概念 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、マダガスカル南部を中心としたオーストロネシア語圏(マダガスカル、仏領ポリネシア・オーストラル諸島、ラパヌイ)で収集したデータをもとに分析と記述を行っている。ようやく公開するための体系的資料がそろい、語彙集の作成、民話の対訳、Tandroy語の体系的記述研究をまとめ、来年度出版のための準備を進めている。本年度は、マダガスカル南部の農村部の薬用植物に焦点をあてて、6月と9月にそれぞれ約2週間の現地調査を実施し、データの収集を行った。政治・治安状態がこれまでに比べて安定してきたことに加え、良い研究協力者に恵まれ、インフォーマントの助けにより、調査は順調に進んだ。これまでの調査対象は言語に重点をおいていたが、伝統医療の情報を得るために、Ambovomne農村部の占い師や呪術師を訪問し、物資や現代医療施設へのアクセスが困難な場所での地域固有の治療法の観察を行った。それに関連して、2016年12月13日にキックオフミーティングとして「フィールドから学ぶ栄養と医術-架橋する伝統技術と現代技術」と題して研究会を開催した。本研究会は今後も定期的に実施する予定である。 2016年12月には、研究課題にある「言語多様性と生物多様性」研究の広域調査を遂行するべくトンガ王国で薬用植物と伝統医療の調査を行った。ここでは、トンガ語モノリンガル話者で文字は書かないが、地域固有の在来知識にすぐれた研究協力者を通じて情報収集をおこなった。予備調査であるが非常に有意義であった。 成果の一部を2016年10月カトリック大学(リマ、ペルー)で開催された国際学会“The Grammar of Body-part expressions”で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マダガスカル南部の調査地の治安状況がこれまでに比べて安定したため、移動や情報収集がやりやすくなった。また、マダガスカル滞在中、首都の医療機関や公共機関と随時連絡をとれる状態になったため、緊急時への備えが十分であった。 さらに、マダガスカル、トンガ王国両方において、非常に良いインフォーマントに恵まれ、円滑に必要な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2017年6月広州(中国)で開催される国際学会The Asian Association for Lexicographyで発表を行う予定である(受理済み)。2017年度中に成果物を出版するために準備を進めている。 調査をはじめたトンガ王国に関してはさらなる調査を実施し、植物利用、自然への知識、資源利用に焦点をあててデータを収集する。 また、2016年12月に開催した研究会「フィールドから学ぶ栄養と医術-架橋する伝統技術と現代技術」を今後継続して実施し、議論を重ね、長期的視野にたち、分野を超えた学際的な共同研究を実施する。
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