研究課題/領域番号 |
15K16739
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西本 希呼 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (10712416)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 言語多様性 / 生物多様性 / オーストロネシア語圏 / フィールド言語学 / 消滅危機言語 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)前年度までに引き続きオーストロネシア語圏のマダガスカルを中心とした学術調査を行い、言語調査を行うこと、(2)これまでの言語調査研究で観察されてきた生物資源利用に関する在来知識にかんする調査をおこなうことである。 マダガスカルでの調査は、調査予定時期に肺ペストが蔓延していたため、渡航を延期することとなったが、電話のつながる研究協力者に連絡をとり、植物や昆虫に関する伝統知識やこれまでの継続的課題である言語調査資料をまとめ、『<茨の国>の言語』(慶應大学出版社,2018年2月)として出版した。ほかのオーストロネシア語圏であるトンガ王国での調査は短期間ではあるが、有意義であった。伝統医療と現代医療の地域住民の選択の場、とくに薬用や手工芸用の生物遺伝資源に関する伝統知識について、医療機関に勤める医学博士およびトンガ放送局の職員による助けを得ることができ、新たな調査土地としてこれから長期的に継続する基盤を構築することができた。(撮影した映像資料に関しては現時点では個人情報および現地の知的財産の保護のために公開は行っていない。) なお、2018年3月にトンガに調査へ赴いた時期は、ちょうと1ヶ月前に、トンガでの史上最大規模のサイクロンが襲い、復旧途中であった。しかし、町は全くパニック状態にはあらず、インフラのないころの伝統知識・技術を駆使して、入手可能な資源を利用して生活していた。予期せぬことではあったが、大自然災害後の復興・復旧の仕方と、被災したあとのトンガ人の生活を観察することは、本研究に新風を与えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年に調査渡航を予定していたマダガスカルにおいて、肺ペストが首都で蔓延したため、感染症の危険のみならず、治安も不安定となるため、渡航を延期した。そのため、マダガスカル南部で予定していた、データの再確認と植物学者との共同研究を行うことができなくなり、予定より遅延している。さらに、ほかの調査地として基盤ができたトンガでは2018年2月に史上最大のサイクロンが襲い、調査に赴いた3月は復興途中であり、ライフラインが不安定で、作物が通常通り市場に並んでおらず、生活に根付く植物に関する調査など予定していた調査を進めることが困難であった。(一方、このような大きな自然災害が起きたあとのトンガでの観察は、本研究に新風を与えた。)
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現地の医療機関に勤める研究者と、伝統医療知識に明るいトンガ人の助けを経て、首都からはなれた離島、ババウ島での調査を展開していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
マダガスカルへフィールド調査へ赴くことを予定していたが、肺ペストの蔓延により死者が増えるのみならず政情不安となり、渡航を延期した。2018年度年始めころに、肺ペストによる混乱が落ち着いたので、今年度、マダガスカルで開催される国際オーストロネシア言語学会の時期にあわせて渡航し前年度予定していた調査を行う予定である。
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