研究課題
本研究課題は、視聴覚コーパスにおけるオノマトペ(擬音語・擬態語)の観察から、そのコミュニケーション上の機能を探るものである。最終年度は、本課題から導き出される2つの根本的問題を中心に研究を進めた。1つ目は、オノマトペの「原始性」である。オノマトペは、その模倣的性質から、漠然と言語の起源に結び付けられることがある。本研究では、オノマトペが豊富とされる言語の類型論的特徴を概観することで、オノマトペの原始性にいくらかの傍証を得た。オノマトペは、言語進化の比較的早い段階に位置付けられることがある膠着型、SOV型、動詞枠付け型といった特徴を持つ言語に多いようである。さらに、オノマトペが述語外で用いられるか(例:家の周りをグルグルと回る)、述語の一部として用いられるか(例:家の周りをグルグルする)といった言語内・言語間に見られる多様性が、オノマトペの言語体系への統合度合いを反映している可能性を考察した。2つ目は、オノマトペの語彙項目としての「体系性」である。従来、オノマトペは語音と意味の間に自然な関係を持つ「音象徴的」な語類と考えられてきた。例えば、「サラサラ」より「ザラザラ」が粗くて不快な手触りを表すのは、音象徴的な現象とされる。しかし、特定の言語の語彙体系の一部として存在している以上、オノマトペの音象徴には、その言語独自の「不自然」な音と意味の関係が宿りうる。本研究では、日本語オノマトペの音と意味の関係を統計的・実験的に調査し、その言語個別的な体系を炙り出した。例えば、「サラサラ/ザラザラ」のような有声性(清濁)の対立は、日本語話者には最重要な音象徴的対立を生むが、通言語的には必ずしも一般的ではなく、非母語話者には意味の違いが推測しがたいことがある。このように、本研究課題は、オノマトペの言語的特徴を追究することで、未だ根本的課題の多いオノマトペの言語学に新たな道筋を示した。
すべて 2021 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 4件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (3件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
日本語と言語類型論
巻: なし ページ: ー
KLS Selected Papers
巻: 2 ページ: 1-16
認知言語学
巻: 2 ページ: 115-137
Operationalizing Iconicity
巻: 17 ページ: 3-20
https://doi.org/10.1075/ill.17.01aki
認知言語学の羽ばたき:実証性の高い言語研究を目指して
巻: なし ページ: 68-81
神戸言語学論叢
巻: 12 ページ: 1-11
実験認知言語学の深化(仮)
日本認知言語学会論文集
巻: 20 ページ: ー
Linguistics Vanguard
巻: ー ページ: ー
Broader Perspectives on Motion Event Descriptions
巻: なし ページ: 143-179
i-Perception
巻: 10(4) ページ: 1-31
https://doi.org/10.1177/2041669519861981
認知言語学大事典
巻: なし ページ: 405-415
よくわかる言語学
巻: なし ページ: 192-201
Ideophones, Mimetics and Expressives
巻: なし ページ: 229-247
https://doi.org/10.1075/ill.16.10aki
Oxford Research Encyclopedia of Linguistics
doi:10.1093/acrefore/9780199384655.013.477
巻: なし ページ: 1-9
https://doi.org/10.1075/ill.16.01aki
Oxford Bibliographies in Linguistics
10.1093/OBO/9780199772810-0236
PLoS ONE
巻: 14(7) ページ: e0218707
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0218707
https://sites.google.com/site/akitambo/Home
https://researchmap.jp/akitambo
https://sites.google.com/site/jpmimeticthesaurus/