研究課題/領域番号 |
15K16742
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高橋 康徳 神戸大学, 大学教育推進機構, 講師 (90709320)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中国語 / 上海語 / ビン南語 / 音韻論 / 声調 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き上海語変調の分析を行うとともに、台湾語変調に関するデータの収集も行った。 上海語変調に関しては、変調域末尾に位置付けられるバウンダリートーンの特性に関して主に音韻論的な観点から分析を行った。日本語などのイントネーション音韻論におけるバウンダリートーンの位置付けとそれに関わる様々な音韻操作を参考にしながら、上海語変調のバウンダリートーンが変調域(音韻語)にどのように指定され、音節とどのように連結するのかを共時的・通時的な観点から考察した。また、上海語の世代的変種によってバウンダリートーンが音節との連結方法を変化させている可能性を示唆するデータが得られた。 加えて、上海語の長時間の発話音声データを分析して発見した変調域末尾での「予期しない」ピッチ下降が、より古い世代の上海語の痕跡として残っている可能性があることを発見した。ただし、このピッチ下降は出現環境が今の所安定せず、個々の話者や語用論的な要因なよって出現頻度が変化する可能性がある。 台湾語変調に関しては、母語話者からの聞き取り調査を行い変調域の記述を行なった。これまでの調査結果を俯瞰すると、台湾語変調の変調域は先行研究が指摘するような音韻規則だけでは捉えることが難しく、同一の文であっても文情報の焦点が異なる場合に変調域が大きく変わることが見受けられた。つまり、台湾語の変調域は音韻論的なレベルだけではなく語用論的なレベルの要因にも大きく影響を受けている可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上海語に関してはデータの収集および音韻論的な分析も進んでおり、研究論文の作成も進行中である。台湾語に関してもデータの収集は順調に進んでおり、より詳細な分析を行う上で重要なファクターを同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
上海語に関しては、変調域の最終的な音韻構造を理論的に提案する。また、変調域末尾で起きる「予期しない」ピッチ下降について通時的な観点で分析を進めるとともに、その出現環境について考察を進める。 台湾語に関しては、データの収集を継続しつつ音韻論的なアプローチだけではなく語用論的なアプローチも視野に入れた分析を行う。 また、ここまでに蓄積した自然発話音声の分析方法を利用して、その他の中国語方言に関する分析まで射程を広げていきたい。
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