本研究は,現代朝鮮語の諸方言における形態音韻論的現象の実態を明らかにするところにある.2012年の科研費では〈n挿入〉,2013年から2015年の科研費では〈濃音化〉を扱い,興味深い言語事実を顕現させることができたが,いずれもその対象はソウル方言であった.そこで,今回は,ソウル方言以外の方言,具体的には,大邱方言と釜山方言を対象に調査を行なった.調査項目は大邱方言では〈n挿入〉に絞り,釜山方言では〈n挿入〉に加え,〈濃音化〉,〈激音化〉,n-l連鎖の発音,uyの発音,用言語幹末のlk,lpの発音など,揺れが予想されるものを広範に扱い,20代の話者をインフォーマントに,発音実態を仔細に調べた.
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