研究課題
本研究の目的は、従属節が主節を伴わずに単独で用いられる「中断節構文」が果たす相互行為上の機能について、会話分析の方法を用いて記述を行うことである。最終年度である平成30年度の研究成果は以下の通り。まず、「てゆう」でマークされる名詞修飾節中断節構文について、会話における語りの組織化の観点から行った分析の取りまとめを行い、第1回会話分析研究発表会(2018年9月)にて口頭発表と論文執筆を行った。さらに、主要部名詞の省略に焦点を当てた論考を、第16回語用論国際会議(2019年6月)の口頭発表に申し込み、採択された。また、「けど」でマークされる副詞節中断節構文について、トラブル報告に用いられる用法に焦点を当て、終助詞「よ」が用いられた場合との比較を行った。第5回会話分析国際会議(2018年7月)にて口頭発表を行った。さらに、「と」でマークされる引用節中断節構文について、直前の発話に対する理解確認を行う用法を対象に、「~ってこと?」など述部が明示された形式との比較を行い、その成果を第5回会話分析国際会議にて発表した。加えて、編者の1人をつとめた『会話分析の広がり』が出版され、その中の第3章にて会話分析の手法を用いた言語研究のアプローチについて概説と分析の例証を行った。事例分析には、副詞節中断構文との関連が深い、副詞節の後置現象を取り上げた。研究期間全体の成果は以下のようにまとめられる:(1)自然会話データベースの拡充と整備、(2)自然会話データベースからの中断節構文(特に名詞修飾節、副詞節、引用節によるもの)の事例収集、(3)名詞修飾節、副詞節、引用節による中断節構文が生起する会話文脈の分析、(4)会話分析の手法を用いた言語研究の理論的・方法論的位置づけに関する考察以上のように、科研費の助成を受けることによって大いに研究を進展させることができた。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件) 図書 (1件)
平本毅・横森大輔・増田将伸・戸江哲理・城綾実(編), 『会話分析の広がり』
巻: NA ページ: 63-96
社会言語科学
巻: 21(1) ページ: 160-174
https://doi.org/10.19024/jajls.21.1_160