平成30年度は、①前年度よりも検索範囲を拡大し、子どもによるトートロジー発話の理解と産出に関する実例を収集した。②山本 (2018)で行った実験から得られた結果を新たな観点から再分析したものを国際学会で発表し、論文としてまとめた。③トートロジーとアイロニーの理解度を測る調査(対象者:中学生および高校生)を行うための質問紙を完成させた。具体的には以下の通りである。 第一に、子どもによるトートロジー発話の理解と産出に関する実例収集に取り組んだ。これまでの検索手法とは異なり、大人が子どもに対してトートロジー表現を用いる場面なども検索範囲に含めたことにより、子どもによるトートロジーの理解度をとらえられるような例をいくつか得ることができた。今後は、これらの例から、子どもが理解することができるトートロジー表現の傾向をつかみたい。第二に、子どもによるトートロジーの誤解のプロセスを明らかにするために、山本 (2018) による日本人小学生を対象としたトートロジーとシミリーの理解度を測る実験結果を再分析した。その研究成果を国際学会で発表し、論文としてまとめた。本研究では、トートロジーを理解する際、子どもは、Winner (1988) が提案する文字通りではないことばを理解する3ステップのすべてにおいてつまずくこと、他者の意図を読み取る能力の欠如がトートロジー理解に制約を課すことを明らかにした。第三に、トートロジーとアイロニーの理解度を測る調査(母語が日本語である中学生および高校生を対象)に用いる質問紙を完成させた。本調査は、<シミリー、メタファー、アイロニーという順に進む修辞表現の発達プロセスにおいて、トートロジーはどこに位置づけられるのか>という、本研究課題のリサーチクエッションに一定の答えを導き出すために行うものである。
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