本研究は、与路島・請島を中心とした北琉球奄美大島方言の体系的記述、若年層への継承活動、敬語体系の運用実態の比較を行うものであり、具体的には以下の3点を目的とした。(ⅰ)与路島・請島を主な対象としながら消滅の危機に瀕する奄美大島方言の語彙や談話を記録し、類型論的な視点に基づいた文法記述書を作成・出版する。(ⅱ) 同地点を中心とし、地域コミュニティによる教育活動や言語維持、言語の再活性化の活動に資することができる一般向けの解説書や音声・映像を含む方言教材の作成、方言指導者の育成を行う。(ⅲ)上記の(ⅰ)(ⅱ)と並行して、敬語体系に重点をおいた調査・研究を他の琉球諸語地域でも行い、その結果を申請者のこれまでの研究成果と照合することで、琉球諸語敬語法及び日本語敬語法における奄美方言敬語法の位置付けを再検討する。 計画上、最終年度は、類型論的観点による前段階の分析の再検討及び理論研究者や他言語研究者にも利用可能な文法記述書の作成・出版すること、学術的成果を基盤に、一般向け解説書や方言教材の作成、方言指導者の育成することを目指した。 しかしながら、文法記述書を作成するに十分な調査データを得ることができなかったため、最終年度の成果としては、文法・語彙調査及び自然談話資料の収集・談話資料の作成、方言指導者育成のための人脈作りにとどまった。原因としては、調査地点が複数あるため1地点にかける時間を十分にとれなかったこと、話者の高齢化による調査の継続や本務校の業務上調査日程を十分にとることが難しかったことがあげられる。
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