本研究は、1) 定性の観点から見たル形の研究、2) 語性を明らかにするための語形成の研究、の2つに大きく分けられる。1については、並列詞「か」によって接続される選言等位節を対象に統語的分析を行い、述語の形態は同じル形であっても、その節は様々な大きさの統語構造を持っていることを詳細かつ具体的に示した。この成果は刊行予定の論文集『テンス・アスペクト研究を問い直す 第1巻「する」』に掲載される「不定(形)としてのル形と「か」選言等位節」と題する論文によって公開される。2については、これまで研究の少なかった外来語動名詞と比較することによって、一字漢語動名詞と二字漢語動名詞の振る舞いの違いが形態の数とは直接関係しないことを明らかにし、外来語動名詞を自他の観点から分類した際に漢語動名詞とはその分布が異なることを明らかにした。この成果はすでに刊行された論文集『日本語文法研究のフロンティア』に収録の「動名詞の構造と「する」「させる」の分布―漢語と外来語の比較 ―」と題した論文によって公開された。さらに、「形容詞+する」という組み合わせによって形成される表現が、全体としては明らかに句であるにも関わらず、一種語彙的な性質を持つこと、一部に独特な振る舞いを見せるタイプが存在することを示し、詳細な記述を行った。この成果は『文藝言語研究』第71巻に収録の「動作動詞句を形成する「形容詞ク形+する」」と題する論文によって公開されている。また,分散形態論において語彙的要素の核となる要素であるRootの実在性とその統語的・意味的性質を明らかにした論文「接頭辞「小/大」の副詞修飾的解釈とRoot仮説」が『文藝言語研究』第72巻において公開された。
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