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2016 年度 実施状況報告書

擬態語に由来する程度副詞<ちょっと>類の成立と展開

研究課題

研究課題/領域番号 15K16759
研究機関静岡大学

研究代表者

深津 周太  静岡大学, 教育学部, 講師 (50633723)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード程度副詞 / 擬態語 / 連体表現 / 中近世日本語 / 感動詞化 / 意味変化
研究実績の概要

本年度は、1.《ちょっと類》を素材とした連体修飾表現の歴史的展開(前年度から継続)、2.本来情態副詞である《ちょっと類》が程度副詞化するプロセスの解明、に取り組んだ。また次年度課題への足掛かりとして、3.副詞「ちょっと」の感動詞化、について見通しをつけた。
1.《ちょっと類》副詞は〈ちょっとの型〉と〈ちょっとした型〉という二つの連体修飾表現の型をもつ。中世における《ちょっと類》の一形式「そっと」の領域では、「そっとの」が【量・存続量】を表し、「そっとした」が【程度】を表すという対応関係があった。これは「そっと」に固有の特徴だが、近世以降「そっと」が衰退することに伴い、その関係が「ちっと/ちょっと」に引き継がれ、その結果〈ちょっとの型:ちょっとした型〉という型による機能の表し分けがなされることとなった。
2.「ちっと」は本来、【動作の軽度】を表す擬態語であり、それが【程度】の意味を経て【量・存続量】へと意味的な拡張を遂げる。一方、「そっと」は【動きの素早さ】を表す擬態語であり、それが【存続量】を経由して【量・程度】へと拡張していく。両社は意味の抽象化を直接的契機として程度副詞化する点、程度副詞としての意味・統語的性質を段階的に獲得する点で共通するが、その獲得順序が相違している。これは、両形式の本来の(擬態語としての)意味の異なりに起因するものである。
3. 近世以降に「ちょっと」が呼びかけ感動詞へと変化することについて、それが行為指示表現中に現れる用法に由来するとの仮説を立てた。具体的には、聞き手への配慮を孕む[ちょっと+行為指示](例:ちょっと聞いて)の行為指示部を非表示とすることで、さらなる配慮を示す[ちょっと+φ](例:お願いだからちょっと(聞いて))という表現を契機として感動詞化が進んだとの見方を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度の中心的課題とした《ちょっと類》連体修飾表現について補完的な論文をまとめた。
また、本年度の課題である《ちょっと類》の程度副詞化の問題も上記論文に組み込むなど、複数の課題を有機的に関連付けることにも成功した。この課題に関しては、それに焦点を当てた口頭発表も行い、少なくとも「ちっと/そっと」の二形式の変化プロセスはある程度解明されたと見る。
さらに、次年度課題として設定する「感動詞化」について、口頭発表において仮説の提示とその検証を行った。次年度に関連論文を刊行する予定である。
以上、前年度・次年度との接続も含めて研究の進捗状況は順調であると言える。

今後の研究の推進方策

程度副詞化に関して複数の現象を観察すると、一般化できる部分は確認できつつも、むしろ目をひくのはその(要因・道筋の)個別性である。各ケースを追いながら、意味的・統語的性質の獲得・変化が何を意味するかという高次の問題に結び付けていきたい。
感動詞化については、「ちょっと」を取り上げ、現段階で立てている仮説に基づいた変化プロセスの説明を進めていきたい。感動詞化自体は他の語彙項目にも起こりうるものであり、そもそも感動詞化とは何か、という課題にも取り組む方針である。

次年度使用額が生じた理由

購入予定であった図書(古書)を、想定よりも低価格で購入できたため。

次年度使用額の使用計画

特に近世期の資料を中心に、図書購入費に充てることとする。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 「ちょっと」類連体表現の歴史―二つの型による機能分担の形成過程2016

    • 著者名/発表者名
      深津周太
    • 雑誌名

      日本語の研究

      巻: 12-2 ページ: 18-34

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 「大した/大して」の成立と展開2016

    • 著者名/発表者名
      深津周太
    • 学会等名
      近代語学会
    • 発表場所
      白百合女子大学(東京都調布市)
    • 年月日
      2016-12-03 – 2016-12-03
  • [学会発表] 副詞「ちょっと」の感動詞化―行為指示文脈における用法を契機として―2016

    • 著者名/発表者名
      深津周太
    • 学会等名
      日本語学会 2016年度秋季大会ワークショップ
    • 発表場所
      山形大学(山形県山形市)
    • 年月日
      2016-10-30 – 2016-10-30
  • [学会発表] 様態副詞の程度副詞化―名詞的用法の位置―2016

    • 著者名/発表者名
      深津周太
    • 学会等名
      名古屋大学国語国文学会春季大会シンポジウム 副詞と名詞の交差―機能語の形成・派生と文法変化―
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2016-07-09 – 2016-07-09

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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