本課題では、促音および後続閉鎖音の閉鎖区間におけるvoicingに注目し、音響的な分析を通して各地域方言における音声実態、特にその世代的様相を明らかにすることを目的として2015年より研究を行ってきた。最終年度である2018年度は、主にこれまでに収集した資料の整理と分析、そして発表を行った。以下では(1)追加資料の収集、(2)資料の整備、(3)分析・考察、発表に分けて報告する。 (1)追加資料の収集:東京若年層の話者を数名分追加調査した。 (2)資料の整備:既存資料の単語のsegmentationを終えたと報告を受けた資料を見直したところ、不備のあるファイルが多数見つかったため、やりなおしの作業を進めた。また、今年度新たに収集した資料についても単語のsegmentationを進めた。segmentationを終えが資料についてはevent markingの作業も進め、熊本方言についてはこれを終えた。年度末までにevent marking作業を進めたが、全ての資料を終えることはできなかった。 (3)分析・考察、発表:event marking作業を終えた熊本方言について、既存資料および本科研での収集資料を併せ、促音閉鎖部の音声的有声性について音響分析を行った。特にゆ年層差に着目して分析を行ったところ、熊本方言において、有声促音(有声音が後続する促音)の閉鎖区間の音声的有声性について年層差が見られることを指摘した。特に1950~70年代を境に大きく異なっており、高年層では閉鎖区間中のvoicingが長く続くものが多く見られた。これらの結果については論文にまとめ、『音声研究』22巻2号(日本音声学会)に掲載された。
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