研究課題/領域番号 |
15K16763
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
岩田 美穂 就実大学, 人文科学部, 講師 (20734073)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 文法史 / 方言 / 形式名詞 |
研究実績の概要 |
昨年5月から2月まで病気療養のため、研究活動が中断した。昨年度実施予定の計画は、A:中央語におけるキリ(ギリ)及びカギリについての調査考察、B:鹿児島県甑島方言における条件表現形式ギー(ギリ)の調査考察、C:愛媛県東予方言における副助詞ギリの予備調査の3点であったが、遠方に調査に行くことができる状態ではなかったため、B、Cの調査については実施できていない。Aについても一部の資料調査が終わった段階である。 Aについては、18~19世紀の上方語(関西地方を中心とする言語)・江戸語のキリ(ギリ)のデータを収集した段階である。上方語においては、変化が進んでおらず、用例も多くない。副詞句への変化が進んでいるのは19世紀江戸語以降である。今後、明治から大正にかけての東京語を分析する。また、上方と江戸における変化の差がなぜ生じたのか、対照を行いながら、考察していく。 B、Cについては、本年度7~8月に第一回の調査を行う予定である。 本研究の目的は、日本語における統語構造変化の多様性を実証することにある。現代共通語においては副詞句を形成するキリ(ギリ)であるが、上方語では江戸(東京)語ほど変化は進んでいない。東予方言においても、共通語のような副詞句は形成せず、名詞句の段階以上に変化してはいないと見られる。一方で甑島方言では条件節を形成することができ、共通語よりも更に変化が進んだ段階であると考えられる。これらは語彙的資源を同じくするにも関わらず、各言語(方言)によって変化の段階に大きな差がでている。これまでの日本語史研究は中央語の変化を中心とし、変化が「どこまで進むのか」が主要な観点であった。本研究を進めることによって、そのような単一線の過程ではなく、一つの大きな変化の方向性を軸とし共有しながらも、最終的な「着地点」にさまざまな段階があり得ることを実証的に示すことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年5月より2月に至るまで病気とその治療のため研究活動が出来なかったため。
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今後の研究の推進方策 |
27年度実施予定であったA:中央語におけるキリ(ギリ)及びカギリについての調査考察を進める。B:鹿児島県甑島方言における条件表現形式ギーの考察、C:愛媛県東予方言における副助詞ギリの予備調査については、7~8月頃に調査を予定している。研究計画がほぼ1年遅れているため、28年度実施予定であった調査は回数を減らし、縮小する可能性がある。Cについては、調査を円滑に進めるため、調査補助としてアルバイトの研究補助者を付ける。A,Bについては本年度中の論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年5月より2月まで、病気療養のため研究活動が出来ず、調査等に赴けなかったため、研究費のほぼ使用がなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度実施予定であった調査を本年度に合わせて行う。ただし、調査に赴く回数は限られているため、調査を円滑に進めるため、7~8月の調査に関しては補助として、アルバイトを雇う予定であり、計画よりも人件費を多く支出する。また、研究期間の延長も検討する。
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