研究課題/領域番号 |
15K16767
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
乙武 香里 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 時空間変異研究系, プロジェクトPDフェロー (60709848)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発話行為 / 終助詞 / 讃岐方言 / 自然会話 |
研究実績の概要 |
本研究は、発話行為に連続的な体系が存在し、その連続体の内部構成(隣接関係・重なり)が方言ごとに異なるという仮説を立てた上で、香川県の方言(以下、讃岐方言と表記)の発話行為の体系を明らかにすることを目的としている。発話行為の体系は発話末表現から導けると予測し、讃岐方言の発話末表現の中でもナ行音終助詞(「ナ」、「ノ」、「ネ」)に焦点をあて、ナ行音終助詞とともに為される発話行為の隣接関係と重なりを明らかにする。 平成27年度は、終助詞「ナ」が頻出する地域と終助詞「ノ」が頻出する地域で母方言話者の自然会話を収録し、90分程度のデータを計8つ得た。これに平成22年に収録したデータを加え、アノテーションソフト(ELAN)を用いて会話中の発話のタグ付けを行なっている。 これまでに整備したデータをもとに、統語環境の観点からの分析と考察に着手した。具体的には、ナ行音終助詞が非文末に間投助詞として現れるときの出現状況を調べた。自然会話を、話の内容が即時的に生み出される側面の強い「純粋な雑談」と、話者が予め話そうと用意していたことが語られる「披露話」に分け、それぞれに現れるナ行音終助詞の出現状況と特徴を比較した。結果として、ナ行音終助詞(多くは間投助詞として)の出現比率が「純粋な雑談」において高いこと、その出現がつっかえ発話や言いよどみの後、りきみ声や感動詞的に現れる「もう」の前後で多いことが明らかになった。また、この結果より、讃岐方言のリズムの側面からみたナ行音終助詞の出現意義へと考察を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初よりも多人数による会話のデータが増え、アノテーション作業に時間を要しているが、会話参与者が増えることで発話のバリエーションが豊富になったことから、今後予定しているデータ補充のための対面式聞き取り調査の回数が減ると考えられる。多人数会話データの充実により、活気のある会話のデータが増え、ナ行音終助詞が間投助詞として現れる際の分析が大きく進んだ。また、ナ行音終助詞の出現意義という出現全体に関する考察に進展した。これらの点から、おおむね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
アノテーション作業を完了し、研究の主軸をデータ整備からデータの分析に移す。分析の過程で、適宜、データ補充のための調査票を用いた対面式聞き取り調査と容認度調査を行う。 ナ行音終助詞の出現する統語環境と発話行為の関係の分析を本格的に進めるとともに、各ナ行音終助詞の出現頻度と対話相手との相関、会話の状況と発話行為との関係についても分析・考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
収録した会話データの書き起こし作業を依頼する予定だった者1名が、平成27年度中は作業ができないことになったため。
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次年度使用額の使用計画 |
改めて、収録データの書き起こし作業を依頼し、謝金として使用する。
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