研究課題/領域番号 |
15K16768
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
金田 純平 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 機関研究員 (10511975)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 笑い話 / ナラティブ / 地域間比較 / 談話構造 |
研究実績の概要 |
まず、既存の笑い話資料に基づく分析を実施した。これは研究を進めるうえで今後の分析項目を洗い出すために行うもので、しばしば体験談の中の会話の引用部分において、声の高さを変えたり、声質を変えたりすることで、想定される発話者の人物像の表現が行われていることが明らかになった。また、その時の人物像の表現は実際の話者の声そのものをまねているのではなく、話者の属性(例えばお年寄り)の人物像に基づく声の特徴(例えばゆっくり弱い声で話す)や役割語の使用(例えば、終助詞に「のう」を使用する)が見られた。この研究成果については、日本語文法学会第16回大会パネルセッションにおいて口頭発表を行った。 次に、会話データの収録については東北地方において実施することができ、2名分約1時間のデータが収録できた。データについて会話構造を分析したところ、Maynard(1989)が挙げるような6つの構成要素(Prefacing, Setting, Narrative Event, Resolution, Evaluation, Conclusion)が見られたが、既存の笑い話資料のうち関西の女性によるものと比較すると、Narrative Eventの部分に見られる階層構造(説明・遭遇・反応)が希薄であり、起きた事象を時系列に基づいて語るということが見られた。まだ、2人分のデータだけでありこれを東北地方の語りの特徴として挙げるのは早計であるが、今後の調査を行ううえで注目すべきポイントを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年度開始直後に病気で倒れ、1か月間入院を余儀なくされた。また、退院後の体調が不良気味であったため、夏に向けての準備が遅れ、データ収録のためのインフォーマントの確保や収録の機会を十分にとることができなかった。そのため、データの収録は東北地方1件2名のみとなり、当初予定していた6名分の収録には至らなかった。 また、関東地方での収録計画も立てることができず、データ収録が実施できていない。以上のことから、当初の計画通りのデータの収録が実施できておらず、また談話資料のコーパス化も代表者の手作業による一部のほかは実施できてない。 以上のことから、本研究課題の進捗は遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、データの収録が急務である。そのための協力者およびインフォーマントの確保や収録場所の提供の依頼が必要である。これらが実施できる体制をそろえ、そのうえで収録の計画を立てることで、収録の実施を推進したい。 また、研究補助員を雇用して行うコーパス作成も、特に発話内容の部分については文字起こし業者を利用するなどして、研究補助員を雇用しなくてもコーパスの構築が行える体制を整えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
十分なデータ収録のための出張が実施できなかった。また、収録データのコーパス化に係る研究補助員の雇用も実施できなかった。そのため、旅費と謝金について当初の計画を大幅に下回る結果となり、次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に使用できなかった旅費については、今年度のデータ収録および学会参加にかかる出張費用として使用する。また、謝金については文字起こし業者を利用する場合の委託費として充当する。
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