今年度はこれまでに収録したデータをもとに、ナラティブにおける談話構造について分析を行った。語りの構成要素はMaynard(1989)によると導入・背景説明・出来事語り・結末・評価・結句というようになっており、関西地方の話者による語りでは、出来事語りの内部に出来事の「説明」・場面の展開での「遭遇」・それに対する話し手の心理的「反応」という構造が繰り返し現れていた。 しかし、東北地方(山形)の話者による語りでは、Maynardのいう構造は形成されており、その内部構造については場面の展開での「遭遇」についても数は少ないが現れていたが、関西地方の話者のものとは異なり、一つ一つの場面での遭遇したことへの「反応」に関する言及が見られなかった。また、「説明」「遭遇」(「反応」)の繰り返しが出来事語りの内部構造として繰り返されるということも見られず、「説明」が続くか、一度だけその中で「遭遇」が登場するというパターンが見られた。東北地方では関西地方での語りのパターン(型)が異なっているということが確認できた。 中国地方(広島)の話者による語りでは、もちろんMaynardのいう構造は見られたが、その内部構造については、「説明」「遭遇」のパターンをとり、数多くないものの「反応」についての言及は部分的に見られた。また、「説明」「遭遇」(「反応」)を繰り返すパターンも、「反応」が常に現れるわけではないが、わずかではあるが出現することが確認された。これにより、中国地方では関西地方での語りのパターン(型)が部分的にも現れることがわかった。
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