研究実績の概要 |
最終年度は、項省略の関連現象である動詞残留型VP省略の前提条件になっている動詞移動(述語移動)現象の研究を中心的に行った。その成果の一部は日本言語学会第152回大会ワークショップ(「動詞残余型動詞句削除分析」2016年6月26日、慶應義塾大学)および国立国語研究所領域指定型共同研究プロジェクト「日本語から生成文法理論へ:統語理論と言語獲得」第1回共同研究発表会(「日本語の動詞移動に関して」2016年12月26日ー27日、国立国語研究所)にて口頭発表を行った。関連する論文である "Verb-stranding verb phrase ellipsis in Japanese"が国際誌Journal of East Asian Linguisticsから出版された(Volume 25, Issue 2, pp.113-142, 2016年5月)。また、省略現象一般に関する学問史的研究である "Ellipsis in transformational grammar"が論文集the Oxford Handbook of Ellipsisに掲載予定である(Maryland大学Howard Lasnik教授との共著、Oxford University Press)。 日本語のような主要部後置型の言語において動詞移動の存在を示すためには、語順が手がかりにならないため、より抽象的で高度な統語的議論が必要になる。本研究では、VP前置という目に見える現象を手がかりにして、日本語に動詞移動が存在することを経験的に示した。 日本語に動詞移動が存在するという本研究の主張が正しいとすると、前年度の研究から得られた結論である日本語ではVP省略が許されているという主張を補強することになる。なぜなら日本語のVP省略は動詞移動の存在を前提にしているからである。
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