研究課題/領域番号 |
15K16775
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研究機関 | 東北公益文科大学 |
研究代表者 |
狩野 晃一 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90735648)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 初期中英語 / 異綴り / 摩擦音 / 写本 / アングロ・ノルマン語 |
研究実績の概要 |
『初期中英語言語地図』をもとに当年度必要な写本関連の情報(収蔵図書館、制作年代、方言、書体)をまとめた一覧を作成し、計画にあるように北部方言及び南部方言のテクスト分析を進めた(写本画像を取り寄せての転写作業もこの中に含まれる)。 まず古英語-htの前の母音が前母音であるか、後母音であるか、その環境によって分類し、古英語-htに対する初期中英語期の異綴りを抽出し、比較をした。特によく現れる3語(BRIGHT, KNIGHT, MIGHT)について調査を行った。前母音+ OE-htの環境では、北部方言において、摩擦音/ç/のない形<-t>が少なく、主要形は<-ht>、ついで<-ght><-3t>であった。南部方言では摩擦音/x/のない形<-t>は全く現れず、<-th>という形が1例のみ見られた。主要形は北部と同じく<-ht>である。また、後母音 + OE-htの環境では、北部方言の主要形は<-ht>で<-ght><-3t>が同様に続く。南部方言では用例そのものが少なく、わずかに<-ht>と<-3t>が1例ずつあるのみであった。今年度の調査結果は7月に英国リーズ大学で行われる国際学会で発表予定である。 リストにある写本のうち何点かについては写本そのものを参照する必要が出てきたが、諸事情により、現地での調査ができなかったため、平成28年度夏季にまとめて調査する予定である。また以前より研究を続けていた後期中英語期における異綴りの問題についての論文を大学紀要に投稿した(2月刊)。 現時点まで英語の異綴りの問題のみについて注目してきたが、同一写本に含まれる同一写字生による他言語(例アングロ・ノルマン語)の異綴りにも目を向ける必要性があることが判明した。これは次年度の課題の中に組み込むつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度において、当初予定していた調査作業はほぼ完成していることから、概ね良好な進捗状況であると思う。しかしながら、昨年、家庭の事情により、予定していた海外図書館等での実地調査ができなかった。その分、作成した基礎資料の正確さにいくらか問題が残る。また異なる綴り字の収集を進めていく上で、いかにその綴り字を発音に引きつけて解釈するかという点で、参考にしていたLass & Laingの方法論をもう一度検証する必要があり、時間を予定よりも多く費やさざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】で述べたように、少々の遅れが生じている。計画書にもある通り、年度始めにあたって、今一度計画を見直し、昨年度の遅れを取り戻すつもりである。綴り字と発音の関係について、さらに深く考察することが求められるので、中英語のみならず、当時イングランドで用いられていたアングロ・ノルマン語の書記法について詳しく調査を進め、解決策を見出したい。また基礎資料のデータベース化を進めるつもりである。 さらに来年度開かれる海外学会での発表に向けた準備、投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
家庭の都合で予定していた英国への研究旅行に出られなかったことが理由である。現地に行かなかった代わりに計画よりも多くの書籍を購入した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年の9月に英国への研究旅行に出かける予定であり、昨年度、現地調査が実行に移すことができなかった分、期間を長めにとって複数図書館で調査を行う。
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