研究課題/領域番号 |
15K16775
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研究機関 | 東北公益文科大学 |
研究代表者 |
狩野 晃一 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90735648)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 初期中英語 / 綴り字 / 発音 / 写本 / 写字生 / 修正 |
研究実績の概要 |
平成28年度は写本画像からのテクスト転写に加え、初期中英語期言語地図(A Linguistic Atlas of Early Middle English, ver.2)からの言語情報と実際の写本情報を照合する作業を進めた。進めていく中で、写本、方言、書体、内容等についての情報もまとめ、適宜参照できるようにするためデータベース化した。 平成28年7月にはそれまでの研究成果を英国リーズ大学で行われた国際中世学会(International Medieval Congress)で 'Digression or Progression?: An Analysis of the Variant Spellings of Old English -ht in the Early Middle English Period' と題して発表した。この内容は'On the Variant Spellings and Their Sounds of Old English -ht in the Early Middle English Period: A Brief Survey'として論文にまとめた。 続く9月にはロンドン、オックスフォードを中心に写本調査を行い、マイクロフィルムなどの画像では不鮮明であった部分について、直接写本との照らし合せ、不明点を明らかにした。 また、それまでの本研究における言語検証は主に「綴り字」と「脚韻」に頼って進めてきたが、この伝統的な方法論だけでは限界があると感じ、新たな視点「加筆・修正addition / correction」を加えることにした。まだこの理論には洗練が必要であるが、有効なものであると認められた。この観点から行った北部方言テクストに関する研究の一端を、第98回チョーサー研究会において「写字生の修正/習性から見る初期中英語期北部方言の諸相」として発表した。この発表の一部は論文にして公開の予定である。今後は他方言テクストにおける傾向を探り、消えた音の検証を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は7月に予定通り国際学会で発表し、年度末3月にも新たな知見を加えて研究会で発表する機会を得た。テクストデータの入力は重要と思われるものはほぼ済んでおり、今後は断片や小品を中心に進めていく。また平成29年度中の学会発表も準備が進んでいるため、概ね順調に進展していると言って良いだろう。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究計画の最後の年となるため、より精度の高い結果を目指して取り組みたい。具体的には、未見の写本調査とそのテクスト照合、また平成28年度後半より取り入れた新たな方法論である写字生の「加筆・修正」の理論をより精密なものにし、他方言テクストに当てはめ、言語変化の傾向を探り、今までの知見と合わせて結果をまとめたいと考えている。またその結果を公開するべく、準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
機器等、あるいは書籍等購入に際し、割引などが発生したため。また人件費を次年度に回したために差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は最終年度であるため、研究成果公開にあたり、人件費、旅費、データ保存用機器などに助成金を使用する計画である。
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