研究実績の概要 |
平成29年度は3ヶ年計画の最終年度である。『初期中英語期方言地図』のデータと自らが収集したデータを元に発音変化の検証にあたった。昨年度の終わりに口頭発表したものを活字にした(「写字生の修正から初期中英語期発音の変化を検証する」『東北公益文科大学総合研究論集:forum21』33号, pp. 1-13 (2017-12-20))。新たに取り入れた分析の視点である「写字生の修正」を様々なテクストにあてはめ、ある程度の進展を見た。その成果をポーランドのポズナンにあるアダムミキエヴィッツ大学主催の国際学会(The History of the English Language - Poznan; 2017 Conference)で口頭発表を行い、好評を得るとともに参加者からの有益な指摘や助言を受けることができた。 他言語(古ノルド語、古フランス語、アングロ・ノルマン語など)からの綴り字(および発音)への影響については、例にあげた全ての言語について書記法を検討することはできなかったが、アングロ・ノルマン語を扱うことができた。Anglo-Norman Text Societyから刊行されているテクストに現れる綴り字の分析を進める過程でいくつかの興味深い関連を見つけた。一例として、かつてアングロ・ノルマン語の影響によると言われていたOE -htに対する<-ght>という綴り字が最初に現れるのが影響の強い南部ではなく北部方言に見つかることが挙げられる。これは当時の写字生の行動(移動や経路など)を再考する必要を匂わせるものである。 以降は過去3カ年の研究の成果を冊子あるいは書籍の形にまとめる予定である。
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