本研究課題の目的は、視点表現の運用能力育成に重点を置いたオンライン学習交流用教材の開発である。具体的には、次の3つの課題の達成を目的としている。 (1)視点表現の使用実態を明らかにし、教材のトピックシラバスを作成する。(2)第二言語習得理論を採用している教材及びオンラインレッスン用の教材分析を行い、視点表現の運用能力育成を目的としたオンライン学習交流用教材の内容を作成する。(3)作成した教材を用いて、オンライン学習交流を実施し、効果測定を行う。 令和元年度は、課題(2)および(3)に取り組んだ。具体的な成果としては次の2点があげられる。まず、作成した4種類の教材および言語交換の実施方法等の詳細について,ウェブサイトを作成し広く公開し、希望者が使用できる環境を整えた。 次に、4種類の教材を用いた言語交換のパイロット・スタディを実施し、その効果に関する分析を行った。日本語母語話者2名および中級入門レベルの日本語学習者2名(中国語話者1名,韓国語話者1名)をペアにし,開発した教材を用いて、言語交換を行った。言語交換の形式に慣れるため,まず対面で実施し,ビデオ通話に移行することとしたが、COVID-19の影響により途中で中止せざるをえなかったため、対面中心となった。実施した言語交換は2ペアの合計回数が9回で,うち対面が8回,ビデオ通話が1回であった。①レベル判定のためのSPOTテスト,②事前・事後の文法テスト,③事前・事後の話すテスト,④事前アンケート,⑤事後インタビュー,⑥言語交換中の録音提出,⑦毎回の言語交換の感想文提出を参加者に課し,データを収集・分析した。COVID-19の影響により,4~5回程度の短期間の言語交換に変更せざるを得なかったため,主に④~⑦について質的に分析し,教材の問題点および効果について検討した。
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