本研究は、オノマトペのニュアンス、特に暗黙的ニュアンスを学習するE-learningシステムの構築とその習得メカニズムの分析を目的としている。2017年度までの研究は以下のようである。提案した学習法を利用して、オノマトペのE-learningシステムを構築し、予備実験を実施した。その後、被験者からのフィードバックに応えて、量的な比重を占めるパ行オノマトペを中心に、最も難しい状態・感情を表すオノマトペを学習タスクの文脈を設定した。最終年度である2017年度は、今までの研究の集大成として、日本語オノマトペのE-learningシステムを完成させ、個人ウェブサイト(www.lixiaoyan.jp)に公開した。さらに、暗黙知の習得メカニズムに関する理論的な考察まで目指した。主な実施事項は以下の二点である。1)本研究で構築したE-learningシステムを用いて、オノマトペの学習効果を考察するための検証実験を行った。2)暗黙的ニュアンスの習得メカニズムを理論的に考察した。 1)について、学習効果を検証するために、オノマトペを創作する「創作群」と、感性的記述を学習する「学習群」との間で比較実験を行った。まず学生全員に対し「オノマトペの形式的ルール」について講義を行ってから、「創作群」に実際にオノマトペを創作させ、創ったオノマトペに対して母語話者からの感性的フィードバックを与えた。それに対して学習群には感性的記述を配布して学習させた。その結果、創作群においてのみ学習前後でテスト成績の有意な上昇が見られた。2)について、学習者は感性的データベースを通して暗黙的ニュアンスを習得することができることがわかった。つまり、「オノマトペの創作」―「感性記述のフィードバック」―「仮説修正およびニュアンスの内面化」を繰り返すプロセスを通じて、オノマトペの暗黙的ニュアンスを体得することができる。本研究は今後オノマトペ以外の暗黙知の習得メカニズム解明に役立つだろう。
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