研究実績の概要 |
最終年度の平成29年度は,昨年度に取り組んだ連想情報と共起情報の差異性に関して更に分析を進めるとともに,これらの情報の特長を応用した日本語語彙学習システムの試作に取り組んだ. 具体的には,動詞連想概念辞書の構築・拡張の際に使用した約3,000人分の連想実験データと5年分の新聞コーパスに対して,word2vecによる単語の分散表現をそれぞれ求め,動詞の類似度から「動詞-動詞」の関係について分析を行った.その結果,連想情報では動詞が表す動作に対して「状況が似た動作」や「前後の動作」,「一部の動作」を表す動詞の類似度が高く,共起情報では「複合動詞」にあたる動詞の類似度が高い関係であることがわかった. 試作した日本語語彙学習システムは,上記を含めた連想情報の特長を応用し,動詞連想概念辞書を用いて穴埋め形式問題を自動で生成する.まず,動詞連想概念辞書の動詞を述語とする単文を生成する.この単文には,動作主や対象に関して連想しやすい語と格助詞を組み合わせた文節の他に,括弧と格助詞からなる文節が含まれている.また,単文と一緒に4つの単語が括弧に入る選択肢が動詞連想概念辞書の情報を用いて呈示される.学習者が単語を選択すると正解語のみが画面に残り,どの単語が最も連想しやすい語なのかが分かる仕組みになっている.このようにして,学習者は日本語話者の連想に沿って語彙を学習することが期待できる. 以上から,期間全体の成果としては,動詞連想概念辞書の拡張(平成27,28年度)とともに,換喩解析の応用(平成27年度)・品詞間の分析(平成28,29年度)で示した連想情報の特長を日本語語彙学習システムに応用したことが挙げられる.今後は,日本語学習者を対象にして,試作した日本語語彙学習システムを評価したいと考えている.
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