研究課題
本研究では共通の学習目標規定が存在しない日本国内のポルトガル語教育において、語彙面での学習目標の指針を欧州言語共通参照枠 (CEFR) と学習者コーパスに基づいて提案することを目指した。研究は以下の段階を経て行われた。まず、CEFR習熟度別ポルトガル語学習者コーパスから習熟度別語彙リストを作成した。ポルトガル語学習者コーパスのCorpora do PLE(リスボン大学、7万語)とCorpus de PEAPL2(コインブラ大学、12万語)を統合してCEFR習熟度別に整理し、各習熟度間での各語彙の頻度をひとつひとつカイ二乗検定し、習熟度別の特徴語彙を明らかにした。結果、A(初級)、B(中級)、C(上級) それぞれ約500語、合計約1500語の語彙リストが得られた。ただし、数字や時間の表現など直観的には基礎語彙であるものの、頻度が少ないために中上級に分類されてしまう語彙が多く見られ、頻度主義の問題点が明るみになった。続いて、調整データのひとつとして、日本国内で流通するポルトガル語教科書6編をコーパス化し、分析して語彙頻度リストを作成した。教科書コーパスの各語彙は、既存の大規模母語話者コーパス(LMCPC、リスボン大学)での使用頻度とカイ二乗検定によって有意差比較された。結果、教科書で用いられる語彙と、母語話者が実際に用いる語彙の意味領域は大きく異なっていることが明らかになった。最後に、学習者語彙リストをベースに、不足する基礎語彙を補うため、母語話者語彙リストの頻度情報と教科書語彙リストのレンジ情報を反映して、最終的に初級と中級で約1500ずつ、合計約3000語の語彙リストが完成した。なお、上級語彙の特定は見送られた。最終語彙リストは、途中で作成した習熟度別学習者コーパス語彙リスト、初級教科書語彙頻度リストとともにウェブ上に公開されている。
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CILC2016. 8th International Conference on Corpus Linguistics (EPiC Series in Language and Linguistics)
巻: 1 ページ: 396-410
http://www.tufs.ac.jp/ts2/society/pvp/