研究課題/領域番号 |
15K16795
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
松野 和子 静岡大学, 大学教育センター, 講師 (80615790)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | multi-word units / 反応時間 / プライミング効果 / 言語情報処理過程 / 第二言語習得 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本人英語学習者における複語ユニット(multi-word units)の情報処理過程を明らかにすることである。その際、複語ユニットに内在する言語性質の違いによって、(a)情報処理過程が異なるのか、(b)異なる場合、どのような差異があるのかを明らかにすることを試みる。 平成27年度では、複語ユニットを抽出した後、予備実験を行った。予備実験1では、前もって記憶された表現パターンを用いて複語ユニットが処理されるかを検証するため、複語ユニットの反応時間と自由連結表現(free combinations)の反応時間を比較した。反応時間を比較する複語ユニットと自由連結表現は同一の統語形式とし、表現を構成する単語1語1語では同じ速度で処理される項目を選定した上で、表現全体への処理では反応時間に差が生じるかを分析した。予備実験2では、複語ユニットを処理する際、統語分析を行っているかを検証するため、表現パターンが記憶されている複語ユニットを対象に、(ⅰ)複語ユニットと同様の統語形式である表現または(ⅱ)異なる統語形式である表現のいずれかをプライムとして呈示した後に、ターゲットとして複語ユニットを呈示した。つまり、反応を求める複語ユニットは同一の表現にもかかわらず、先に呈示された表現が同一の統語形式か否かによって反応時間に差が生じるかを分析した。予備実験1と予備実験2では、上級日本人英語学習者を実験参加者とした。 予備実験後、実験装置の動作やインターフェースの適切性を確認した。加えて、実験に関する説明や個人情報の扱いに関する説明書、同意書、実験参加者の属性(例: 年齢や性別)や英語の習熟度に関する質問紙、複語ユニット(例: 学習歴や意味理解)に関する質問紙を見直した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成27年度に複語ユニットを言語性質に基づき分類する計画であり、平成28年度に予備実験を行う予定であった。しかしながら、実験方法の改善点が見出される場合、早い段階で対応するほうが望ましいと判断したため、複語ユニットを抽出した後、平成27年度に予備実験を行い、複語ユニットにおける情報処理過程の全体像を把握することを試みた。そのため、当初の予定よりも複語ユニットの分類が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究、コーパス、アンケート調査に基づき、複語ユニットを言語性質(例:表現の使用頻度、意味の不透明度、定型度合)によって分類する。その後、中級日本人英語学習者、上級日本人英語学習者、英語母語話者を対象に本実験を行い、言語性質や学習者の習熟度によって複語ユニットの情報処理方法が異なるかを分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、平成27年度に得られた結果を平成27年度3月に発表する予定であったが、開催日程が平成28年4月9日~4月12日である学会で発表することとなったため。また、平成27年度では、研究室が既に所有していた反応時間測定プログラムと統計分析ソフトウェアを使用して予備実験と結果分析を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に得られた結果について、平成28年度4月初旬にアメリカ合衆国で開催される学会にて発表する。また、予備実験に基づき、実験装置の適切性を検討する。その際、最新の反応時間測定プログラムと統計分析ソフトウェアの購入も検討する。
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