研究実績の概要 |
本研究は、第二言語(L2)学習者による英語名詞の可算性の習得について、抽象名詞に焦点を絞り、その難しさの原因を明らかにするものである。平成29年度では、(1)日本語と英語の名詞における抽象・具象の判断課題、(2)可算・不可算の判断課題、(3)英語における文脈内での可算性判断課題を実施し、分析を行った。 (1)抽象か具象かの直感的判断に、日本語・英語の二言語間で大きな差がないことがわかった。語彙によっては二言語間で差が見られる場合があったが、その原因は、単語が指す意味が言語間で異なること、英語習熟度が低い学習者ほど英単語とそれが指す意味の結びつきが弱く、判断にぶれが生じていることが考えられた。(2)英単語の抽象性判断と可算性判断は相関関係にあり、抽象名詞は不可算、具象名詞は可算と判断される傾向があることがわかった。さらに、抽象名詞の語彙意味カテゴリー(もの、事、関係、状態、動作、達成)が名詞の可算性判断に影響をもたらすかを調べたところ、状態を表す名詞(worry, hope, respect, trust)は不可算と判断されやすいが、その他のカテゴリーではそのような相関は見られなかった。つまり、抽象名詞が可算と判断される場合、その原因はカテゴリーに共通するような性質によるものわけではない可能性が示唆された。最後に、習熟度が高い学習者ほど抽象性と可算性の相関は弱くなり、具象でも不可算、抽象でも可算という判断をするようになることがわかった。(3)適切な文脈が与えられた場合でも、状態名詞は可算として使用されにくいことが明らかになった。また、telicity, durability, punctualityなどに起因する時間的境界の有無が可算性判断に影響を及ぼす可能性は低いこともわかったが、これについてはもう少しデータを増やした上で、統計的に差があるのかどうかを判断する必要がある。
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