研究実績の概要 |
本研究は、第二言語(L2)学習者による英語名詞の可算性の習得について、抽象名詞に焦点を絞り、その難しさの原因を明らかにするものである。平成30年度では、(1)文脈内での可算性判断と単語のみ表示された際の直感的可算性判断の関係性、(2)名詞の語彙的アスペクトに基づいた境界及び派生タイプと可算性判断の関係性について調査を実施し、分析を行った。
(1)L2学習者(特に習熟度の低い者)は名詞の可算性を固定された特性だと思う傾向があり、名詞に対する直感的な可算性と文脈内でどの冠詞を選ぶのかには相関があるという指摘がある。そのような相関が学習者の個人レベルで見られる現象なのか、名詞の意味特性(状態・動作・達成)に起因するものなのかを調査した。学習者別に結果を見ると、中級・上級の学習者の多くは直感的な可算性判断と冠詞の選択が必ずしも常にリンクしているわけではなく、文脈情報を読み取り、直感的に不可算だと感じた名詞にも不定冠詞を使用できることがわかった。しかし、名詞の意味特性からの影響がないわけではなく、特に状態を表す名詞(fear, satisfactionなど)に対しては不定冠詞を使用しづらいことがわかった。
(2)語彙的アスペクト(状態・動作・達成)に基づく時間的境界と名詞の派生タイプ(転換・接尾辞)がどのように可算性判断と関係しているのかを調査した。その結果、派生タイプが可算性判断に影響している可能性は低く、-tionという接尾辞が名詞を可算として捉えやすくしているわけではないとわかった。また、境界がある達成名詞が、非境界である状態・動作名詞より可算として捉えやすいというような傾向も顕著ではなかった。しかし習熟度別にデータを見ると、上級学習者が境界に敏感になっている可能性も見られ、ニアネイティブレベルの学習者であれば、L1話者と同様に、境界性と可算性を関連付けるかもしれないと示唆された。
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