研究課題/領域番号 |
15K16808
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
マスワナ 紗矢子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 講師 (60608933)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | genre analysis / chronological change |
研究実績の概要 |
本研究は、学術目的の英語において特に重要なジャンルとされる学術論文について、分野や雑誌による修辞構造と表現の共通性と特異性を明らかにし、アカデミックライティング教育に具体的な指導内容・方法を提示することを目的としている。平成27年度は、工学・医学・経済学・社会学を対象とする包括的なジャンル分析を行うために必要な論文コーパスの構築と、修辞構造分析のための予備的調査が主な活動であった。まず、インパクトファクターと各分野の文献を参考に、分野別の論文コーパスを構築した。予備的調査として医学論文序論のムーブ分析を行い、当該分野における規範的な修辞構造や題目構造、および雑誌による差異を明らかにした。また、経時的変化を検討するために、医学分野序論を例として、1995年に発表された論文からなる対応コーパスを構築し、上述の観点から新旧論文コーパスを比較した。その結果、修辞構造に大きな差異は見られなかったものの、文や題目の構造、時制等においての変化が認められた。次に、本調査で基礎となる修辞構造単位(ムーブ)の枠組みを決定するため、社会学論文のムーブ分析の結果を当該分野の専門家に確認してもらうと同時に、所属ディスコース・コミュニティーの文化や慣習等の説明を提供してもらい、当該分野のムーブ一覧表を作成した。小規模コーパスを用いて行った平成27年度の予備的な分析においても、実際のアカデミックライティング指導において有益な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画では、平成28年度に行う分析に必要なコーパスと分析の枠組みを構築することが予定されていたが、おおむね順調に遂行できた。とくに、予備分析において経時的変化の観点を取り入れることができ、より包括的なジャンル分析を行う準備が整ったといえる。一方で、専門家との協働では分析結果の確認に時間が長くかかったため、協働方法の工夫が今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成28年度では、前年度に完成した論文コーパスを用いて、全体のムーブ分析に加え、題目、見出し、定型表現の分析を行い、それぞれに分野、雑誌、構造に基づく考察を加える。これらの分析結果を用いて、論文執筆のモデル化に必要な、修辞構造の柔軟性、プロトタイプ、そして規則の三つを提示することができると考える。分析結果の可視化といった教育に向けての応用や、アカデミックライティング教育の具体的な指導内容や方法の提案も行う。また、研究成果を国内外の学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、謝金の使用額が計上額より少なく次年度使用となった。理由としては、コーパス構築に必要な論文のテキスト化作業が効率よく行われたこと、そして専門的知識の提供として謝金を支払った専門家の人数が少なかったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は少ないものの、最終年度となる平成28年度に行う研究成果発表のための旅費に充当する予定である。
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