本研究は、学術目的の英語において特に重要なジャンルである学術論文について、修辞構造と表現の観点からの分析を加え、アカデミックライティング指導に具体的な教授内容を提示することを最終目標としている。本年度は、昨年度に構築したコーパスを用いた分析を中心に行った。まず、タイトルや見出しを含めた序論を中心とした分野横断的分析により、医学論文と経済学論文の分野的特徴を明らかにした。また、英語使用の通時的変化が分野により異なることが示された。修辞構造の変化においては比較的類似性が高かったが、語彙文法の観点からの相違が見られた。学術論文の英語を用いて、学術目的の共通語としての英語についても議論した。次に、社会科学分野の専門家との協働作業を通して、論文全体のムーブ分析結果の確認や特徴的な表現について当該分野の文化や慣習等を考慮した詳細な描写を行った。雑誌によるライティングの差異についても考察を加えた。また、学際的研究を含む社会科学の論文を分析することにより、昨今必要とされている学際的な分野の学術論文の修辞構造や表現について、今後の研究につながる有益な知見を得ることができた。学際的な分野においては、従来の分野で使われている修辞構造が多く見られる一方で、研究の重要性や意義が広く認識されるよう明示的な表現が多用されていることが示唆された。以上の研究結果を国内外の学会で発表するとともに、投稿論文の執筆を進めた。アカデミックライティング指導に向けた研究結果の応用についても検討した。
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