本研究の目的は、工業高等専門学校におけるタスクを中心としたシラバスを開発し、その指導効果の検証を行うことである。平成28年度は、平成27年度の調査結果を踏まえ、4年生のあるクラス(男子35名、女子3名)を対象にタスクを組み込んだシラバスを作成し、指導を行い、主に情意面の観点からその効果をアクション・リサーチの手法で検証した。 本授業で用いたタスクは「企業紹介タスク」と「製品紹介タスク」である。4年生は夏休みにインターンシップに参加することになっていた。企業について意識したり具体的に調査したりする時期であることを考慮し、学習者に身近なトピックでタスクを作成することとした。 第1回目から第3回目の授業では、1分間英会話活動を行った。第4回目から第7回目の授業において「企業紹介タスク」を、第10回目から第13回目の授業において「製品紹介タスク」を行った。 学習者の情意面の変化を調査するために、フィールド・ノーツ、リアクション・ペーパー、質問紙の3種類のデータを収集した。フィールド・ノーツは、教師である筆者が学習者の様子について気づいたことを可能な限り詳しくメモをした。また、上に挙げた各実践が終わる毎に、学習者のコメントや感想をリアクション・ペーパーによって収集した。また、リサーチの前後における学習者の発話の抵抗感の変化を調査するために、磯田(2009)で用いられた質問紙による調査を行った。 フィールド・ノーツとリアクション・ペーパーを分析した結果、2つのタスクにおいて「楽しく授業に取り組めた」「将来の役に立ちそうである」という声と、複雑な概念を英語で伝えるための指導の必要性が共通して挙げられた。質問紙を量的に分析した結果、発話の抵抗感の下位項目とされている能力認知、不安、回避のいずれの観点からも顕著な変化は見られなかった。
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